メモリ産業に「新たな黄金期」到来か サンディスクが狙う粗利80%の世界

  • 2026年8月14日
  • 2026年8月14日
  • BS余話

前回の記事「サンディスク株が急騰 株価3,000%上昇を支える「粗利80%」計画」では、サンディスク(SNDK)が2026年8月13日のインベスター・デーで示した中長期の成長戦略について紹介しました。

サンディスク株は2026年に入ってから大幅に上昇しており、年初来では541%高となっています。さらにインベスター・デー後の8月13日には13.7%上昇しました。

ここまで株価が上昇すると、一時的なAIブームやメモリ価格上昇によるものではないかと考える投資家もいるかもしれません。

しかし、今回サンディスクが示した計画を詳しく見ると、同社が目指しているのは単なるNAND需要の回復ではありません。長期契約によって収益を安定させ、高付加価値製品によって利益率を引き上げることで、従来のメモリ企業とは異なる収益構造を作ろうとしています。

今回はその中でも特に重要な「NBM」「粗利率80%」「HBF」という3つのポイントから、サンディスクの将来性について考えていきます。

メモリ企業の弱点だった景気循環をNBMが変える

NANDフラッシュをはじめとするメモリ市場は、これまで典型的なシクリカル産業と考えられてきました。

需要が増えればメーカーが生産能力を拡大し、その後供給過剰になると価格が下落します。価格下落によってメーカーが設備投資を抑えると、今度は供給不足になり再び価格が上昇するというサイクルを繰り返してきました。

この構造を変える可能性があるのが、サンディスクが推進している新しいビジネスモデル契約(NBM)です。

NBMの契約期間は平均約4年とされており、すでに8社の顧客と契約しています。

さらに2027年度に予定されている総出荷ビット数の約50%、2028年度については約66%が、すでにNBMによって確保されています。

これはサンディスクにとって非常に大きな変化です。

従来は数四半期先の需要すら読みにくかったメモリ企業が、数年先まで一定の販売数量を見通せるようになるからです。

将来の売上高や生産量を予測しやすくなれば、在庫管理や設備投資も効率化できます。サンディスクは2027年に向けて安全在庫を構築する方針も示しており、需要変動に振り回される経営から、より計画的な経営へ移行しようとしています。

収益の予測可能性が高まれば、株式市場から与えられる評価そのものが変化する可能性があります。

粗利率80%という異例の収益目標

インベスター・デーで特に市場を驚かせたのが、2028年度から2030年度にかけて約80%の粗利益率を維持するという目標です。

同時に、売上高についても10%台半ばから後半の年間成長率を目指しています。

半導体メーカーは巨大な製造設備への投資を必要とするため、粗利率80%という水準は極めて高い数字です。

この目標の背景には、NBMによる販売価格と数量の安定化に加えて、高付加価値製品へのシフトがあります。

単純に大量のNANDを販売するだけではなく、AIデータセンターなど高性能が求められる市場へ製品構成を移すことで、1ビット当たりの収益性を高めようとしているのです。

さらにサンディスクは、事業に必要な投資を行った後の余剰資金について、すべて株主へ還元する方針も示しました。

これまでの半導体企業は、好況期に得た利益を次の大型設備投資へ投入し、その後の価格下落で収益が悪化するというサイクルを繰り返してきました。

サンディスクが計画通り高い利益率と安定したキャッシュフローを実現できれば、メモリ企業に対する従来の評価を大きく変える可能性があります。

AI推論市場で期待されるHBF

もう1つの重要な成長材料が、高帯域幅フラッシュ(HBF)です。

現在のAI市場では、大規模モデルを開発する「学習」だけでなく、完成したAIモデルを実際のサービスで利用する「推論」の重要性が急速に高まっています。

推論処理が増加すれば、膨大なAIデータを高速かつ効率的に保存・読み出すストレージ技術への需要も拡大します。

そこでサンディスクが期待しているのがHBFです。

サンディスクはSKハイニックス(SKHY)とHBFの業界標準コンソーシアムを設立しており、グーグルを傘下に持つアルファベット(GOOGL)やメタ・プラットフォームズ(META)なども参加しています。

AIデータセンターへ巨額の設備投資を行うハイパースケーラー自身が標準化に関与している点は重要です。

HBFが単なるメーカー側の新技術ではなく、将来のAIインフラに必要とされる技術として検討されていることを示しているからです。

サンディスクは2027年からHBFのサンプル出荷を開始する計画です。

HBFが本格的に普及すれば、従来型NANDよりも付加価値の高い製品として、将来の売上高成長と利益率向上の両方に貢献する可能性があります。

サンディスクは「シクリカル株」から変わるのか

今回サンディスクが示した戦略で最も注目したいのは、単なるNAND市場の好況を前提としていないことです。

NBMによって販売数量と収益の予測可能性を高め、HBFなどの高付加価値製品によって利益率を引き上げる。そして生み出したフリーキャッシュフローを株主へ還元するという新しい事業モデルを作ろうとしています。

もしこの戦略が計画通り進めば、サンディスクは従来の「メモリ価格が上がれば利益が増え、価格が下がれば利益が急減する企業」から、より安定したキャッシュフローを生み出す企業へ変化する可能性があります。

マイクロン(MU)やウエスタンデジタル(WDC)などメモリ関連株が注目されている背景にも、AIによる需要拡大だけでなく、こうした業界構造そのものの変化があります。

サンディスクが掲げる粗利率80%という目標は非常に強気ですが、NBMによる長期契約とHBFによる高付加価値化が実現すれば、これまでとは異なるメモリ産業の「新たな黄金期」が始まる可能性があります。

今後は、2027年に予定されるHBFのサンプル出荷と、NBM契約比率のさらなる拡大が、サンディスクの長期成長ストーリーを確認する重要なポイントになりそうです。

情報ソース: MarketWatch: “ Sandisk’s stock is flying higher. Here are the new targets that are exciting Wall Street.” (By Britney Nguyen, Aug. 13, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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