オン・セミコンダクター株が時間外で急伸 AIデータセンター売上倍増が示す成長余地

  • 2026年8月4日
  • 2026年8月4日
  • BS余話

パワー半導体大手のオン・セミコンダクター(ON)が、2026年8月3日の米国株式市場終了後に第2四半期決算を発表しました。

今回の決算では、売上高と1株当たり利益(EPS)がともに市場予想を上回ったほか、AIデータセンター向け事業の急成長が明らかになりました。主力の自動車向け半導体事業を収益基盤としながら、AI、IoT、エッジコンピューティングへと事業領域を広げる同社の戦略が、数字として見え始めています。

本記事では、第2四半期決算の内容と会社側が示した見通しを整理し、オン・セミコンダクターの事業構造の変化と今後の成長可能性を分析します。

第2四半期決算は売上高・利益ともに市場予想を上回る

オン・セミコンダクターが発表した第2四半期の売上高は16億400万ドルとなり、アナリスト予想の15億8,900万ドルを上回りました。

1株当たり利益(EPS)は74セントとなり、市場予想の71セントを上回っています。自動車や産業向け半導体市場では需要回復のペースにばらつきが残っているものの、売上高と利益の双方で市場予想を上回った点は、同社の事業運営が安定していることを示しています。

あわせて発表された第3四半期の業績見通しでは、売上高を16億5,000万ドル〜17億5,000万ドル、EPSを81セントから93セントと見込んでいます。

第3四半期についても、第2四半期からの増収が想定されており、半導体需要が底打ちから回復局面へ移行しつつある可能性がうかがえます。

自動車向け事業が売上高の半分以上を占める

オン・セミコンダクターの主力事業は、自動車向け半導体です。自動車関連の売上高は全体の半分以上を占めており、電気自動車(EV)、先進運転支援システム(ADAS)、車載カメラ、電力制御システムなどに製品を供給しています。

自動車の電動化が進むほど、電圧や電流を効率的に制御するパワー半導体の搭載量は増加します。また、車両の高機能化に伴い、画像センサーや各種制御用半導体の需要も拡大します。

自動車市場は景気や販売台数の影響を受けやすい一方、1台当たりの半導体搭載金額は長期的に増加する傾向があります。オン・セミコンダクターにとって、自動車事業は引き続き中長期的な収益基盤になると考えられます。

AIデータセンター向け売上高は2026年に2倍以上へ

今回の決算で特に注目されたのが、AIデータセンター向け事業の成長です。

同社のAIデータセンター向け電力管理用パワー半導体および集積回路の売上高は、前年実績で2億5,000万ドルでした。会社側は、2026年の売上高が前年比で2倍以上に拡大するとの見通しを示しています。

仮に売上高が5億ドルを超えた場合、アナリストが予想する2026年通期売上高65億ドルの約8%を占める規模となります。

AIデータセンターでは、エヌビディアなどが供給するGPUに注目が集まりやすいものの、実際にはサーバーへ安定的に電力を供給し、電力損失や発熱を抑える半導体も不可欠です。

AIサーバーは従来型サーバーより消費電力が大きいため、電力変換効率を改善するパワー半導体の重要性が高まっています。オン・セミコンダクターは、AIブームの恩恵を演算用半導体ではなく、電力インフラの側面から取り込もうとしています。

ハッサン・エルコーリー最高経営責任者(CEO)は、AIデータセンター向け事業について、同社で最も急速に成長している分野であり、顧客による採用が進んでいると説明しました。

決算発表後の株価は時間外取引で6%以上上昇

決算発表後、オン・セミコンダクターの株価は時間外取引で6%以上上昇し、85.92ドルを記録しました。

2026年に入ってからの株価上昇率は約50%に達しており、業績回復に加えて、AIデータセンター向け事業への期待が株価を押し上げているとみられます。

今回の株価上昇は、単に市場予想を上回る決算を発表したことだけが理由ではありません。AI向け売上高の具体的な成長見通しが示されたことで、オン・セミコンダクターを従来の自動車向け半導体企業ではなく、AIインフラ関連企業として評価する動きが強まった可能性があります。

シナプティクス買収でIoTとエッジ分野を強化

オン・セミコンダクターは2026年6月下旬、IoT関連半導体企業のシナプティクスを約70億ドルで買収すると発表しました。

買収発表直後は、買収金額の大きさや財務負担への懸念から株価が下落しました。しかし、中長期的には、同社の製品ポートフォリオを大きく変える可能性があります。

オン・セミコンダクターは、パワー管理技術と画像センシング技術を強みとしています。一方、シナプティクスは、エッジIoT向け半導体、無線通信、ネットワーク機能、インターフェース技術などを保有しています。

両社の技術を組み合わせることで、電力制御、センシング、通信、データ処理を統合したシステムを提供できるようになります。

例えば、産業用ロボット、スマート工場、車載システム、監視カメラ、医療機器などでは、センサーで取得した情報を端末側で処理し、通信しながら効率的に電力を管理する機能が必要です。

オン・セミコンダクターは、個別の半導体部品を供給する企業から、複数の機能を組み合わせたシステム提案型の企業への転換を目指していると考えられます。

自動車・AI・IoTの3本柱が成長を支える

今後のオン・セミコンダクターを評価するうえでは、自動車、AIデータセンター、IoTの3分野が重要になります。

自動車事業は、EVやADASの普及を背景に安定した需要が期待できます。AIデータセンター事業は、売上規模こそ現時点では限定的ですが、2026年に2倍以上の成長が見込まれる高成長分野です。

さらに、シナプティクスの買収によってIoTやエッジコンピューティングへの展開が進めば、特定市場への依存度を引き下げながら、新たな収益源を獲得できる可能性があります。

一方で、約70億ドルの買収には、統合コストや負債負担、想定通りの相乗効果を実現できないリスクもあります。買収後の利益率やキャッシュフローの推移については慎重に確認する必要があります。

オン・セミコンダクターの将来性をどう見るか

今回の決算は、オン・セミコンダクターが単なる自動車向けパワー半導体企業から、AIとIoTを取り込む総合的なインテリジェント半導体企業へ変化しつつあることを示しました。

主力の自動車事業が安定した収益を生み出し、その資金をAIデータセンターやエッジIoTなどの成長分野へ振り向ける構造は、経営戦略として合理性があります。

特に、AIデータセンター向け売上高が2026年に2倍以上へ拡大する見通しは、同社の成長率や市場評価を変える可能性があります。

今後は、AI向け売上高が会社計画通りに拡大するか、シナプティクス買収による相乗効果が利益率の改善につながるか、自動車市場の需要回復が継続するかが重要な確認ポイントです。

これらが順調に進めば、オン・セミコンダクターは「自動車向け半導体企業」という従来の評価を超え、AI時代の電力管理、センシング、エッジ処理を支える重要企業として存在感を高める可能性があります。

情報ソース: Barron’s: “On Semiconductor Rises on Solid Earnings Beat as AI Data Center Revenue Grows” (By Anita Hamilton, Aug. 3, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「オンセミ株13%急落の真相 シナプティクス買収が示すフィジカルAI時代の幕開け

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