個人投資家向け取引アプリを提供するロビンフッド・マーケッツ(HOOD)は、7月29日のマーケット終了後に2026年第2四半期決算を発表しました。
売上高と1株当たり利益は市場予想を上回りましたが、暗号資産取引の低迷や今後の成長持続性に対する警戒から、決算発表後の株価は下落しました。
一方で、株式やオプション、イベント契約、サブスクリプションなどの事業は大きく成長しています。さらに、AIを活用した取引サービスや予測市場といった新規事業も立ち上がり始めており、ロビンフッドは暗号資産依存型の証券アプリから、総合金融プラットフォームへの転換を進めています。
本記事では、前半で今回発表された決算内容を整理し、後半でロビンフッドの成長戦略と今後の展望について分析します。
ロビンフッドの第2四半期決算は市場予想を上回る
ロビンフッドの2026年第2四半期決算は、売上高と利益の両方でウォール街の予想を上回りました。
1株当たり利益(EPS)は62セントとなり、アナリスト予想の43セントを大幅に上回りました。総売上高は前年同期比32.5%増の13億ドルとなり、市場予想の12億9000万ドルも上回っています。
収益の中心となる取引ベース売上高は、前年同期比44%増の7億7600万ドルでした。
内訳を見ると、株式取引の売上高が95%増の1億2900万ドル、オプション取引が29%増の3億4200万ドルと好調に推移しました。さらに、スポーツや経済イベントなどの結果を対象とするイベント契約の売上高は、約10倍の1億5600万ドルへ急拡大しています。
一方、暗号資産取引の売上高は前年同期比38%減少しました。過去12カ月間でビットコイン価格が47%下落するなど、暗号資産市場の低迷が取引量を押し下げました。
サブスクリプションなどの継続収益も成長
取引以外の収益も拡大しています。
有料会員サービス「Robinhood Gold」や「Trump Account」サービスなどを含むその他売上高は、前年同期比54%増の1億4300万ドルとなりました。
相場環境によって変動しやすい取引収益だけでなく、サブスクリプションなどの継続的な収益が成長している点は、ロビンフッドの事業安定性を高める要素です。
一方、総営業費用は33%増の7億3400万ドルとなりました。マーケティングや新規事業への投資に加え、2026年6月に発表した人員削減に伴う一時費用が計上されています。
同社は全正社員の約10%を削減する方針です。2025年末時点の従業員数は約2900人だったため、相応の規模の組織再編となります。
AIエージェント取引の口座数が10万件に到達
新規事業では、2026年5月に導入したAIエージェント取引が注目されています。
AIエージェント取引の口座開設数は約10万件に達し、預かり資産(AUC)は1億ドルを突破しました。
AIが投資家の取引や資産運用を支援する仕組みが定着すれば、利用者のアプリ滞在時間や取引頻度が増加する可能性があります。ロビンフッドにとっては、取引収益やサブスクリプション収益の拡大につながる新たな成長分野です。
ただし、現時点の預かり資産は会社全体から見れば限定的です。今後は口座数だけでなく、1口座当たりの資産額や実際の収益貢献を確認する必要があります。
予測市場が新たな収益源として急拡大
ロビンフッドは、予測市場にも積極的に進出しています。
2026年6月には、サスケハナ・インターナショナル・グループとの合弁によって、認可済みの新取引所「Rothera」を開始しました。同取引所を利用した予測市場の取引実績は、すでに35億契約に達しています。
予測市場では、スポーツの勝敗やFRBの政策判断、選挙結果など、将来発生する出来事を対象に取引します。
投資とエンターテインメントの要素を組み合わせられるため、従来の株式投資に関心が薄い利用者を取り込める可能性があります。イベント契約売上高が約10倍に拡大したことからも、需要の強さがうかがえます。
一方で、予測市場は規制の影響を受けやすい分野です。長期的な成長事業になるかどうかは、取引量の拡大だけでなく、各国の法規制や収益性を慎重に見極める必要があります。
仮想通貨依存からの脱却が進んでいる
今回の決算で最も重要なのは、暗号資産取引の減収を他事業の成長で補った点です。
暗号資産取引の売上高が38%減少したにもかかわらず、取引ベース売上高全体は44%増加しました。これは、利用者がロビンフッドのプラットフォームから離れたのではなく、株式やオプション、イベント契約など別の商品へ資金を移している可能性を示しています。
ロビンフッドはこれまで、暗号資産市場の活況に業績を左右されやすい企業と見られてきました。しかし、今回の決算では収益源の多角化が明確に進んでいます。
株式、オプション、イベント契約、サブスクリプション、AI取引という複数の収益基盤が育てば、特定の資産クラスへの依存度はさらに低下します。
好決算でも株価が下落した理由
ロビンフッド株は、決算発表当日の通常取引を前日比3%安の89.84ドルで終えました。時間外取引では一時上昇したものの、その後は86.37ドルまで下落し、通常取引終値から4.4%安となりました。株価は年初来でも21%下落しています。
売上高と利益が市場予想を上回ったにもかかわらず株価が下落した背景には、暗号資産取引の減少や営業費用の増加、新規事業の収益性に対する慎重な見方があると考えられます。
また、好調な業績がすでに事前の株価に織り込まれていた可能性もあります。市場は単に売上高が増えたかではなく、今後も高い成長率を維持できるかを重視しています。
ロビンフッドの今後の展望
ロビンフッドは、個人投資家向けの取引アプリから、複数の金融商品やサービスを提供する総合金融プラットフォームへ変化しつつあります。
特に、AIエージェント取引や予測市場は、競合他社との差別化につながる可能性があります。既存の利用者基盤に新サービスを提供できるため、顧客獲得コストを抑えながら収益を拡大できる点も強みです。
人員削減についても、短期的には一時費用や組織への負担が発生しますが、新規事業に経営資源を集中させるための再編と見ることができます。リストラ費用が一巡すれば、利益率改善につながる可能性があります。
一方で、イベント契約や予測市場は規制リスクが高く、AI取引も本格的な収益貢献には時間がかかる可能性があります。今後の決算では、新規事業の口座数だけでなく、預かり資産、取引量、売上高、利益への貢献度を確認することが重要です。
今回の決算は、ロビンフッドが暗号資産市場の回復だけに依存せず、新しい収益モデルを構築し始めていることを示しました。市場の評価が事業構造の変化に追いつけば、株価が見直される余地があります。
情報ソース: Barron’s: “Robinhood Beats Expectations on Surging Revenue, But the Crypto Slump Continues” (By Andrew Welsch and Liz Moyer, July 29, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。