マイクロソフトの逆襲は始まるか?2026年第4四半期決算から読み解くクラウドとAIの未来

7月29日のマーケット終了後、マイクロソフト(MSFT)は2026会計年度第4四半期(6月期)の決算を発表しました。

同社の株価は2026年に入ってから決算発表前までに約19%下落しており、市場ではAI向け設備投資の回収時期や、ソフトウェア事業の利益率低下に対する警戒が強まっていました。

しかし、今回発表された決算は、そうした懸念を大きく後退させる力強い内容となりました。Azureの成長加速に加え、主力ソフトウェア事業も堅調に推移し、巨額のAI投資が収益拡大につながり始めていることが数字で示されています。

本記事では、前半で第4四半期決算の内容を整理し、後半でマイクロソフトのAI戦略と今後の将来性について分析します。

マイクロソフトの2026年第4四半期決算

マイクロソフトの第4四半期決算は、売上高、利益ともに市場予想を上回りました。

売上高は前年同期比18%増の900億ドルとなり、市場予想の876億ドルを上回りました。1株当たり利益(EPS)は4.81ドルとなり、前年同期の3.65ドルから大幅に増加しています。市場予想の4.24ドルも大きく上回りました。

ただし、今回のEPSには、アンソロピックへの投資に伴う32億ドルの未実現利益など、1株当たり27セント相当の特殊な会計利益が含まれています。

アンソロピックの評価額は、第4四半期中に3500億ドルから9000億ドルへ上昇しました。この評価額の上昇が、マイクロソフトの利益を押し上げています。

Azureの成長率は43%に加速

今回の決算で特に注目されたのが、クラウドサービス「Azure」の成長率です。

Azureの売上成長率は43%となり、市場予想の40%を上回りました。Azureを含むインテリジェント・クラウド部門全体の売上高も前年同期比32%増となっています。

さらに注目すべき点は、インテリジェント・クラウド部門の営業利益率が40.6%となり、前年同期とほぼ同じ水準を維持したことです。

マイクロソフトはAI向けデータセンターや半導体、ネットワーク設備に巨額の資金を投じています。設備投資の増加は減価償却費を押し上げ、通常であれば利益率を圧迫する要因となります。

それにもかかわらず、クラウド部門で40%を超える営業利益率を維持したことは、Azureが強い価格競争力と高い収益性を持っていることを示しています。

ソフトウェア事業も市場予想を上回る

企業向けソフトウェアを含むビジネス部門の売上高は、前年同期比15%増となりました。営業利益率も前年からわずかに改善しています。

同部門がウォール街の売上予想を上回るのは、今回で16四半期連続となりました。

市場では、生成AIの普及によって従来型ソフトウェアの価値が低下し、マイクロソフトの収益性が悪化する可能性も指摘されていました。

しかし、今回の決算では、既存のソフトウェア事業が成長を維持しながら、AI機能を新たな収益源として取り込んでいることが確認されました。

Copilotの有料利用率は約7%へ上昇

マイクロソフト365のユーザー数は4億5000万人を超えています。この巨大な顧客基盤に対して提供されているのが、AIアシスタントの「マイクロソフト365 Copilot」です。

Copilotの有料利用率は約7%となり、半年前に初めて公表された約3%から2倍以上に上昇しました。

7%という普及率は、一見すると低い水準にも見えます。しかし、別の見方をすれば、既存ユーザーの93%が未開拓であることを意味します。

マイクロソフトは、すでに利用されているWord、Excel、PowerPoint、TeamsなどにCopilotを組み込むことで、大規模な新規顧客獲得を行わなくても追加収益を得られます。

既存顧客への追加販売であるため、販売コストを抑えながら高い利益率を確保しやすい点も大きな強みです。Copilotの普及率が今後さらに上昇すれば、サブスクリプション収益と利益の両方を押し上げる可能性があります。

1450億ドルのAI投資は回収段階へ

マイクロソフトの第4四半期における資本的支出は約410億ドルとなり、2026会計年度の通期では1450億ドルに達しました。

この巨額投資に対し、市場では「AI需要が想定通りに伸びなかった場合、過剰投資になるのではないか」という懸念が広がっていました。

しかし、今回の決算では、Azureの43%成長やクラウド部門の高い利益率という形で、投資成果が表れ始めています。

マイクロソフトはAIインフラを単に保有するだけでなく、自社のクラウドサービス、業務ソフトウェア、AIアシスタントに横断的に活用しています。

この事業構造により、データセンターへの投資をAzureの売上だけでなく、Copilotや企業向けAIサービスの収益拡大にもつなげられます。AI投資が単独の事業ではなく、複数の収益源を支える共通基盤になっている点が重要です。

アンソロピック投資が示すAI戦略

今回の利益には、アンソロピックへの投資による未実現利益が大きく貢献しました。

この利益は会計上の一時的な要因であり、本業の収益力と分けて考える必要があります。一方で、アンソロピックの評価額上昇は、マイクロソフトのAI投資戦略が財務面でも成果を生み出していることを示しています。

マイクロソフトは、自社でAIモデルやサービスを開発するだけでなく、外部の有力AI企業にも投資することで、AI市場全体の成長を取り込もうとしています。

自社製品、クラウドインフラ、外部投資という複数の手段を持つことは、技術変化の激しいAI業界において大きな競争優位性となります。

マイクロソフトの逆襲は始まるか

決算発表後の時間外取引で、マイクロソフト株は8%近く上昇しています。市場が今回の決算を前向きに評価したことは明確です。

2026年に入ってからの株価下落には、AI投資の増加、利益率への懸念、投資回収時期の不透明感が影響していました。

しかし、売上高900億ドルという巨大企業でありながら18%成長を維持し、Azureは43%成長、ソフトウェア部門も15%成長を記録しました。

さらに、Copilotの有料利用率は約7%まで上昇しており、既存顧客基盤を活用した収益拡大の余地も残されています。

マイクロソフトの強みは、クラウド、ソフトウェア、AIインフラ、AIアプリケーションを1社で保有している点です。巨額の設備投資を複数のサービスで回収できる事業構造は、他社には簡単に再現できません。

今回の決算は、AI投資がコスト負担の段階から、成長と利益を生み出す回収段階へ移行しつつあることを示しました。AzureとCopilotの成長が続けば、低迷していた株価が再評価される可能性があります。

情報ソース: Barron’s: “Microsoft Stock Rises on Strong Earnings. The Cloud—And Software—Are Bright Spots.” (By Adam Levine, July 29, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT

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