サービスナウ(NOW)は7月22日の米国市場終了後に第2四半期決算を発表しました。2026年に入り、ソフトウェア企業には「生成AIによって既存サービスの価値が低下するのではないか」との懸念が広がり、同社株も大幅に下落していました。
しかし、今回の決算ではサブスクリプション収益が市場予想を上回り、通期見通しも上方修正されました。さらに、自社のAI・自動化技術による大規模なコスト削減や、サイバーセキュリティ分野への積極投資も明らかになっています。
本記事では、第2四半期決算の主な内容を整理したうえで、サービスナウがAI時代にどのような成長基盤を築こうとしているのかを分析します。
第2四半期決算は市場予想を上回る
第2四半期のサブスクリプション収益は、前年同期比24.5%増の38億7700万ドルとなり、アナリスト予想の38億1700万ドルを上回りました。
将来の売上につながる残存履行義務(RPO)は290億ドルに達し、市場予想の288億ドルを上回っています。RPOの増加は、企業顧客との長期契約が積み上がり、今後の収益に対する高い予見性が確保されていることを示します。
第2四半期の営業利益率は29.5%でした。第3四半期については31%への上昇を見込んでおり、売上成長だけでなく収益性の改善も進んでいます。
一方、第3四半期のサブスクリプション収益見通しは39億7500万ドル〜39億8000万ドルとされ、アナリスト予想の40億1000万ドルをわずかに下回りました。
ただし、通期のサブスクリプション収益見通しは、従来の157億3500万ドル〜157億7500万ドルから、157億6000万ドル〜157億8000万ドルへ引き上げられています。短期的な見通しには慎重さを残しながらも、年間を通じた成長には自信を示した形です。
自社製品で10億ドルのコスト削減を実現
今回の発表で特に注目されるのが、サービスナウが自社の自律型ワークフローツールを社内業務に活用し、人員数をほぼ横ばいに維持しながら10億ドルのコスト削減を達成した点です。
AIや業務自動化を販売する企業が、自社組織で大規模な投資効果を実証したことには大きな意味があります。顧客企業にとって、AI導入の最大の課題は、投資額に見合う成果が得られるかどうかです。
サービスナウは自らの業務を通じて、生産性向上とコスト削減を具体的な数字で示しました。これは営業活動における強力な実績となり、顧客企業の導入判断を後押しする材料になります。
営業利益率が第3四半期に31%まで上昇する見通しであることも、AIと自動化が単なる成長商品ではなく、自社の利益体質を改善する手段として機能していることを示しています。
AIオファリングの導入が9倍に拡大
サービスナウによると、直近9か月間でAIオファリングのエージェント型展開は9倍に増加しました。
企業によるAI活用は、質問に回答するチャットボットから、複数の作業を自律的に処理するAIエージェントへ移行しつつあります。サービスナウの強みは、こうしたAIエージェントを既存の業務フローや企業システムと接続し、実際の業務に組み込める点にあります。
市場では、生成AIが従来型ソフトウェアを代替するとの見方もあります。しかし、今回の業績からは、サービスナウがAIに代替されるのではなく、企業がAIを実装するための基盤として需要を取り込んでいることが確認できます。
サブスクリプション収益とRPOがともに市場予想を上回ったことも、企業顧客がサービスナウのプラットフォームを引き続き重要なIT基盤として評価していることを示しています。
サイバーセキュリティ買収で事業領域を拡大
サービスナウは、サイバーセキュリティ企業のアーミスとヴェザを買収し、セキュリティ分野の機能を強化しています。
同社は現在、リアルタイムで70億以上のデバイスを管理しています。企業内にはパソコンやスマートフォンだけでなく、クラウドサービス、産業機器、IoT端末、AIエージェントなど、多数の接続対象が存在します。
これらを一元的に把握し、脆弱性や不正アクセスのリスクを管理する能力は、企業のデジタル化が進むほど重要になります。
アーミスやヴェザの技術を取り込むことで、サービスナウは業務管理プラットフォームから、企業のIT資産とデジタルIDを保護する総合的なインフラへ進化しようとしています。
AI Control Towerが新たな成長市場を開拓
同社のAI Control Towerは、異なるシステム上で動くAIエージェントを管理し、非人間IDを審査・統制する役割を担います。
これまで企業が管理するIDの中心は従業員でした。しかし、AIエージェントが自律的にデータへアクセスし、契約処理や顧客対応、システム操作を行うようになれば、人間以外のIDを管理する必要性が急速に高まります。
サービスナウは、今後数年で22億以上のAIエージェントが世界経済に参加すると予測しています。これほど多くのAIエージェントが稼働すれば、権限管理、行動履歴の追跡、規制対応、セキュリティ監視が不可欠になります。
AI Control Towerは、こうした新しい課題に対応するための製品です。企業がAIを安全に導入するうえで欠かせない管理基盤となれば、サービスナウはAI普及の恩恵を長期的に受ける可能性があります。
株価下落と事業実態にギャップ
サービスナウ株は、7月22日の終値時点で年初来37%下落していました。ソフトウェア株全体への警戒感や、AIが既存サービスを陳腐化させるとの懸念が株価の重荷となっていたと考えられます。
一方、今回の決算では、サブスクリプション収益とRPOが市場予想を上回り、通期見通しも引き上げられました。加えて、自社製品による10億ドルのコスト削減や、AIエージェントの導入拡大、サイバーセキュリティ事業の強化も進んでいます。
決算発表後の時間外取引で株価が5%以上上昇したことは、市場が同社の成長力と収益性を再評価した動きと捉えられます。
サービスナウは、AIに既存事業を奪われる企業ではなく、企業がAIを導入・管理・統制するためのインフラを提供する企業へ変化しています。AIエージェントと非人間IDの管理市場が拡大すれば、同社にとって新たな長期成長の柱になる可能性があります。
情報ソース: MarketWatch: “ServiceNow’s stock rises as earnings show momentum in cybersecurity” (By Christine Ji and Emily Bary, July 22, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「AIでソフトウェア株は終わるのか 割安になったサービスナウとセールスフォースの復活シナリオ」
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