モデルナ株急騰の理由 COVIDワクチン企業からmRNA創薬企業へ変貌か

  • 2026年6月28日
  • 2026年6月28日
  • BS余話

バイオテクノロジー大手のモデルナ(MRNA)の株価が6月26日の米国市場で急騰し、S&P 500指数の上昇率トップに立ちました。今回の上昇は、単なるバイオ医薬品株への資金シフトだけではなく、同社が「COVID-19ワクチン企業」というイメージから抜け出し、新たな成長ステージへ移行しつつあることを市場が評価した動きと考えられます。

モデルナは、パンデミック期にCOVID-19ワクチン「スパイクバックス」で急成長しました。しかし、その後はワクチン需要の減速により、収益の持続性に対する疑問が強まっていました。今回開催された投資家向け説明会(インベスター・デー)で同社は、mRNA技術を感染症予防だけでなく、がん、免疫疾患、希少疾患へ広げる戦略を明確に示しました。

モデルナが挑む次世代CAR-Tの可能性

今回の発表で最も注目されたのが、モデルナ初の生体内、つまりin vivo CAR-Tプログラム「mRNA-6007」です。

従来のCAR-T療法は、患者からT細胞を取り出し、体外で遺伝子改変を行ったうえで再び体内に戻す仕組みです。高い治療効果が期待される一方で、製造工程は複雑で、時間もコストもかかります。そのため、治療を受けられる患者数には限界があり、商業化の面でも大きな課題を抱えていました。

これに対してモデルナが目指すin vivo CAR-Tは、mRNA技術を使い、患者の体内で直接T細胞を改変するアプローチです。もし実用化されれば、治療工程を大幅に簡素化でき、コスト低下や治療対象患者の拡大につながる可能性があります。

この技術は、がん治療だけでなく、自己免疫疾患の治療にも応用できる可能性があります。モデルナは2027年の臨床開発開始を視野に入れ、全身性エリテマトーデスなどのB細胞介在性自己免疫疾患を初期ターゲットにしています。

メガファーマも注目する生体内CAR-T市場

生体内CAR-Tへの関心は、モデルナだけにとどまりません。大手製薬会社のイーライ・リリー(LLY)も、この分野の技術を持つオルナ・セラピューティクスの買収に合意しており、業界全体が次世代細胞治療の確保に動いています。

この動きは、従来型のCAR-T療法が持つ課題を解決する新しい治療プラットフォームへの期待が高まっていることを示しています。モデルナは、mRNAワクチンで蓄積した技術や製造ノウハウを活用できる立場にあり、この分野で競争力を発揮できる可能性があります。

もちろん、現時点では臨床開発前の段階であり、実際の有効性や安全性はこれから検証されます。それでも、COVID-19ワクチンで示したmRNA技術の実用化力を、より大きな医療市場へ展開しようとしている点は、同社の将来性を考えるうえで重要です。

3つのホライズン戦略で収益源を多角化

モデルナの課題は、COVID-19ワクチンへの依存からいかに脱却するかです。現在の商業化製品は、スパイクバックスを含む3種類のワクチンに限られており、パンデミック特需後の成長ストーリーには不透明感がありました。

今回、同社はパイプラインを「3つのホライズン」に分けたロードマップとして示しました。最も成熟した資産から、後期開発品、さらに将来の新規プログラムへと段階的に成長をつなげる戦略です。

市場では、今後2年間で呼吸器系、がん、希少疾患の分野において7製品以上が市場投入される可能性があると見られています。これが実現すれば、モデルナは単一ワクチン企業ではなく、複数領域に展開するmRNAプラットフォーム企業として再評価される可能性があります。

最大の注目材料はメラノーマ第3相データ

短期的に最も重要なカタリストは、2026年後半に予定されているメラノーマ、つまり悪性黒色腫を対象とした第3相試験データです。

このデータは、モデルナががん領域でどれだけ実効性を示せるかを判断する大きな試金石になります。良好な結果が出れば、同社のmRNA技術が感染症ワクチン以外でも有効であることを市場に強く示すことになります。

特に、がん免疫療法は市場規模が大きく、成功すれば収益構造の大きな転換につながります。一方で、臨床試験の結果次第では株価が大きく変動するリスクもあります。投資家にとっては、期待先行の局面であると同時に、慎重な見極めが必要な段階でもあります。

ウォール街の評価は期待と慎重さが交錯

インベスター・デーを受けて、ウォール街の一部アナリストはモデルナの目標株価を引き上げました。ジェフリーズは目標株価を45ドルから53ドルへ引き上げ、投資判断は「ホールド」を維持しました。一方、パイパー・サンドラーは目標株価を69ドルから77ドルへ引き上げ、「オーバーウェイト」の強気判断を維持しています。

この違いは、モデルナの技術的な可能性を評価する一方で、商業化までの時間や臨床リスクをどの程度織り込むかによるものです。現在の株価水準は2024年9月以来の高値圏にあり、短期的には期待先行の買いが入っている面もあります。

ただし、モデルナが目指しているのは、単なるワクチン企業から、がんや免疫疾患にも対応する先端バイオ医薬品企業への転換です。この変化が本物であれば、同社の評価軸そのものが変わる可能性があります。

モデルナの未来を左右する第二幕

モデルナの将来性は、mRNAという技術基盤を感染症予防以外の領域へどれだけ広げられるかにかかっています。COVID-19ワクチンで急成長した第一幕が終わり、現在は持続可能な成長企業としての第二幕に入った段階です。

2026年後半のメラノーマ第3相データ、そして2027年のin vivo CAR-T臨床開発開始は、同社の中長期的な成長を占う重要な節目になります。成功すれば、モデルナは再びバイオテクノロジー市場の中心銘柄として注目を集める可能性があります。

一方で、バイオ医薬品企業である以上、臨床試験の不確実性や開発遅延、収益化までの時間軸には注意が必要です。モデルナは大きな成長ポテンシャルを持つ一方で、株価のボラティリティも高い銘柄です。今後は、期待だけでなく、実際の臨床データと商業化の進展を冷静に確認していくことが重要です。

情報ソース: Barron’s: “Why Moderna Stock Is Soaring and Leading the S&P 500 Today” (By Mackenzie Tatananni, June 26, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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