マイクロン株急騰の理由 AIデータセンター需要で決算が過去最高水準に

  • 2026年6月25日
  • 2026年6月25日
  • BS余話

マイクロン・テクノロジー(MU)が6月24日の米国市場終了後に発表した第3四半期決算は、市場予想を大きく上回る内容となりました。AI向けデータセンター需要の急拡大を背景に、同社の業績は過去のメモリー市況とは一線を画す水準へと変化しています。

調整後1株当たり利益(EPS)は25.11ドルとなり、前年同期の1.91ドルから大幅に増加しました。ウォール街予想の20.86ドルも大きく上回り、収益力の急回復を強く印象づける結果です。

売上高は前年同期比346%増の415億ドルに達し、市場予想の359億ドルを大きく超えました。さらに、調整後粗利益率は85%、調整後営業利益率は81%と、いずれも過去最高を記録しています。単なる売上拡大にとどまらず、利益率の面でも極めて強い決算だったといえます。

データセンター向け事業が成長の中心に

今回の決算で最も注目すべき点は、売上成長を牽引したのがデータセンター向け事業だったことです。データセンター向け2部門の売上高は前年同期比415%増の250億ドルとなり、総売上高の61%を占めました。

これは、マイクロンが従来の汎用メモリーメーカーから、AIインフラを支える中核企業へと変化していることを示しています。生成AIの普及により、AIサーバーや高性能GPUの需要が拡大するなか、メモリーの重要性も急速に高まっています。

特にエヌビディア(NVDA)の次世代AIサーバーであるベラ・ルービンのような高性能システムでは、膨大なメモリー容量と高速なデータ処理が必要になります。AIモデルが大型化し、データセンター投資が続く限り、マイクロンのようなメモリーメーカーへの需要は継続しやすい構造にあります。

フリーキャッシュフローと財務基盤も大きく改善

収益面だけでなく、キャッシュフローの改善も目立ちました。第3四半期のフリーキャッシュフローは180億ドルとなり、事業から生み出される現金の力が大きく高まっています。

また、5月末時点の現金、現金同等物、短期投資の残高は260億ドルとなり、3カ月前の140億ドルから大きく増加しました。強い利益率と潤沢なキャッシュフローにより、同社の財務基盤は大きく強化されています。

メモリー業界は景気循環の影響を受けやすく、過去には急激な市況悪化によって利益率が大きく低下する局面もありました。実際、2023年には4四半期連続で粗利益率がマイナスとなっていました。しかし現在は、AI需要の拡大によって収益構造が大きく改善しています。

長期供給契約がサイクルリスクを和らげる

マイクロンは顧客と16件の5年間供給契約を結んでいます。これらの契約には、前受金、価格帯の設定、最低購入量が含まれており、将来の売上とキャッシュフローの見通しを高める材料となっています。

メモリー業界で投資家が最も警戒するのは、需要の急減や供給過剰による価格下落です。しかし、長期契約が増えることで、従来よりも収益の安定性が高まりやすくなります。

特にAIデータセンター向けの需要は、短期的な消費者向け電子機器の需要とは異なり、大手クラウド企業やAI企業の長期投資計画と結びついています。前受金や最低購入量が契約に含まれている点は、マイクロンにとって大きなリスク低減要因といえます。

供給制約が価格支配力を支える

もう一つ重要なのが、業界全体の供給制約です。マイクロンだけでなく、SKハイニックスやサムスン電子を含めても、約1年後まで大規模な新規製造能力の稼働が予定されていない状況です。

需要が急拡大している一方で、供給がすぐに増えないのであれば、メモリー価格は高止まりしやすくなります。これは、マイクロンの利益率を支える大きな要因です。

アップル(AAPL)のような強い交渉力を持つ企業でさえ値上げを受け入れざるを得ない状況であれば、現在のメモリー市場は明確な売り手市場にあると考えられます。少なくとも大規模な工場拡張が本格化するまでは、マイクロンに有利な環境が続く可能性があります。

株価上昇後でもPERは低水準

決算発表後の時間外取引で、マイクロン株は14%上昇しました。過去1年間での株価上昇率は762%に達しており、すでに大きく買われている銘柄です。

一方で、今後の予想利益に基づく株価収益率(PER)は9.5倍にとどまっています。S&P500指数の20.8倍と比較すると、かなり低い水準です。

この低いPERは、市場が現在の高収益を一時的なものと見ていることを示している可能性があります。つまり、投資家はメモリー市況の過熱がいずれ反転し、利益率が低下するリスクを織り込んでいると考えられます。

しかし、長期供給契約、AIデータセンター需要、供給制約、強いフリーキャッシュフローを踏まえると、従来のメモリーサイクルとは異なる局面に入っている可能性もあります。今後も高い収益力の持続が確認されれば、マイクロンの評価がさらに見直される余地は残されています。

マイクロンはAIインフラ株として再評価されるか

今回の決算は、マイクロンが単なる半導体市況株ではなく、AIインフラ拡大の恩恵を受ける重要銘柄であることを示しました。データセンター向け売上が全体の過半を占め、利益率とキャッシュフローが過去最高水準に達している点は、同社のビジネスモデルが大きく変化していることを物語っています。

もちろん、株価はすでに大幅に上昇しており、今後もメモリー価格やAI投資の持続性には注意が必要です。ただし、現在の決算内容を見る限り、マイクロンはAI時代のメモリー需要を直接取り込む企業として、市場での存在感を一段と高めています。

今後の焦点は、この高い利益率が一時的なピークなのか、それともAI需要によって構造的に押し上げられた新しい収益水準なのかという点です。その答えが明確になるにつれて、マイクロン株の評価も大きく変わっていく可能性があります。

情報ソース: Barron’s: “Micron Rally Resumes After Big Earnings Beat. The Entire Chip Sector Is Cheering.” (By Adam Levine, June 24, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「メモリーチップ株急落は買い場か マイクロン13%安が示す半導体サイクルの転換点

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