マイクロン株は割高か割安か 2027年EPS150ドルシナリオから考える

  • 2026年6月16日
  • 2026年6月16日
  • BS余話

米国の半導体大手、マイクロン・テクノロジー(MU)への注目が一段と高まっています。AIブームを背景に、同社の株価は過去1年で大きく上昇し、2026年6月15日には1,087.99ドルの過去最高値を記録しました。さらに翌日の時間外取引でも買いが続き、市場ではマイクロンを「次のAIインフラ銘柄」として評価する動きが強まっています。

TDカウエンやキャンター・フィッツジェラルドといった主要証券会社は、マイクロンの目標株価を1,500ドルへ引き上げています。ここまで急騰すると、投資家としては「さすがに上がりすぎではないか」「バブルではないか」と警戒したくなります。しかし、現在のマイクロンを支えているのは単なる期待先行ではありません。AI向けメモリ需要の拡大、利益率の劇的な改善、そして2027年に向けた収益シナリオを見ると、同社の事業構造そのものが大きく変化している可能性があります。

本記事では、マイクロンの将来性について、開示されている事実情報をもとに独自の視点で分析します。

粗利益率80%が示す「メモリ企業」の大変化

これまでメモリ半導体は、典型的な市況産業と見られてきました。DRAMやNANDは需要と供給のバランスによって価格が大きく変動し、好況期には利益が急拡大する一方、不況期には急速に収益が悪化する傾向がありました。

そのため、マイクロンのようなメモリ企業は、好業績を出しても高いPERがつきにくい銘柄でした。市場は常に「この利益は長続きしない」と考え、次の下落サイクルを織り込んできたからです。

しかし、現在のマイクロンを従来のメモリ企業と同じ枠で見るのは、やや時代遅れになりつつあります。特に注目すべきなのが、AI向け高付加価値メモリで達成しているとされる「粗利益率80%」という水準です。

粗利益率80%という数字は、単に製品がよく売れていることを意味するだけではありません。マイクロンがAIサーバーや先端データセンター向けの重要部品において、強い価格決定力を持ち始めていることを示しています。つまり、同社は安価な汎用メモリを大量に売る企業から、AI時代に欠かせない高収益部品を供給する企業へと変貌しつつあるのです。

メリウス・リサーチのアナリストであるベン・ライツェス氏は、この80%の粗利益率について「人々が考えるよりも長く続く可能性がある」と指摘しています。もしAIインフラ投資が短期的なブームではなく、数年単位で続く構造的な需要であるなら、マイクロンの高利益率も一過性では終わらない可能性があります。

2027年のEPS 150ドルシナリオが持つ意味

マイクロンの将来性を考えるうえで、もう一つ重要なのが2027年に向けた収益予測です。アナリストの見方では、2027年の1株当たり利益(EPS)が最大150ドルに達する可能性があるとされています。

この数字は非常に大きな意味を持ちます。仮にマイクロンの株価が現在の約1,100ドル近辺で推移し、2027年にEPS 150ドルを達成した場合、PERは約7倍台にとどまります。これは、AI関連銘柄としては驚くほど低い評価です。

もちろん、将来のEPS予想には不確実性があります。AI需要が鈍化する可能性もありますし、競合他社の供給増によって価格が下落するリスクもあります。それでも、現在の市場がマイクロンに対して目標株価1,500ドルを意識し始めている背景には、この強烈な利益成長シナリオがあります。

1,500ドルという目標株価は、一見するとかなり強気に見えます。しかし、EPS 150ドルを前提にすればPERは10倍程度です。AIインフラの中核部品を供給し、高い粗利益率を維持できる企業として見るなら、決して極端な評価とは言い切れません。

自社株買いが株価上昇を後押しする可能性

2027年に向けて注目したいもう一つの要素が、大規模な自社株買いです。報道によれば、マイクロンは2027年に大きなバイバックを行う可能性があるとされています。

自社株買いは、発行済み株式数を減らすことで、1株当たり利益を押し上げる効果があります。つまり、事業そのものの利益成長に加えて、株式数の減少によってEPSがさらに高まりやすくなるのです。

この点は、投資家にとって非常に重要です。マイクロンがAI向けメモリで高い利益を稼ぎ、そのキャッシュフローを自社株買いに回すことができれば、株主価値はさらに高まりやすくなります。

業績拡大による利益の増加と、自社株買いによる株式数の減少。この2つが同時に進むことで、マイクロンの株価には中長期的な上昇圧力がかかる可能性があります。

6月24日の決算で確認すべきポイント

短期的には、2026年6月24日の市場閉鎖後に予定されている決算発表が大きな注目点です。株価がすでに過去最高値圏にあるため、どれほど良い決算であっても、発表後に利益確定売りが出る可能性はあります。

特に短期トレーダーにとっては、「好材料出尽くし」による下落リスクを無視することはできません。しかし、長期投資家にとって重要なのは、決算直後の株価の上下ではなく、会社側がどのような見通しを示すかです。

具体的には、AI向けメモリの需要が今後も継続するのか、粗利益率80%に近い水準を維持できるのか、そして長期供給契約や顧客動向についてどのようなコメントが出るのかが焦点になります。

もし会社側が強気の見通しを維持し、AI需要の継続性を示すことができれば、短期的な株価調整はむしろ押し目買いの機会になる可能性があります。

マイクロンはAI時代の主役になれるのか

マイクロンの株価はすでに大きく上昇しており、短期的な過熱感は否定できません。しかし、現在の上昇には明確な理由があります。

粗利益率80%という高収益性、2027年にEPS 150ドルへ到達する可能性、そして大規模な自社株買いという株主還元策。これらを総合すると、マイクロンは従来の景気循環型メモリ企業から、AIインフラを支える高収益テック企業へと進化しているように見えます。

もちろん、メモリ市場にサイクルが存在する以上、リスクが消えたわけではありません。供給過剰、価格下落、AI投資の減速、競合の台頭など、注意すべき点は多くあります。

それでも、現時点の事実情報を見る限り、マイクロンはAI時代における重要なインフラ企業として、これまでとは異なる評価を受け始めています。目標株価1,500ドルへの道筋も、単なる楽観論ではなく、2027年の利益成長シナリオを前提にすれば十分に現実味のある水準です。

今後の決算で会社側がどこまで強気な見通しを示せるか。マイクロンの次の上昇ステージを見極めるうえで、6月24日の決算発表は極めて重要なイベントになりそうです。

情報ソース: Barron’s: “Micron Stock Charges Toward New High and Could Reach This Level” (By Adam Clark, June 16, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「1兆ドルクラブ入りでも「超割安」?マイクロン・テクノロジーの異常な株価指標とゴールドマンの視線を読み解く

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