1兆ドルクラブ入りでも「超割安」?マイクロン・テクノロジーの異常な株価指標とゴールドマンの視線を読み解く

  • 2026年6月14日
  • 2026年6月14日
  • BS余話

AIブームの中心銘柄として、マイクロン・テクノロジー(MU)への注目が急速に高まっています。特にHBMをはじめとするAI向けメモリ需要の拡大は、同社の業績見通しを大きく押し上げ、株価も歴史的な上昇を見せてきました。

しかし、株価が大きく上昇したからといって、市場が完全に楽観一色になっているわけではありません。むしろ、現在のマイクロンには「圧倒的な成長期待」と「メモリ市況への根強い警戒感」が同時に存在しています。

本記事では、マイクロンの株価指標やゴールドマン・サックスの見方をもとに、同社の現在地と今後の注目点について考察します。

株価700%上昇でも予想PERは10.2倍という違和感

まず注目したいのは、マイクロンの株価上昇とバリュエーションの間にある大きなギャップです。

同社の株価は直近1年で700%以上上昇し、2026年5月26日には時価総額1兆ドルを突破しました。直近では1兆1,000億ドル規模の大型ハイテク企業となり、AI関連銘柄の中でも存在感を一段と強めています。

通常、これほど急成長した銘柄であれば、将来への期待が先行し、PERはかなり高い水準まで買われることが多いです。ところが、マイクロンの予想PERはわずか10.2倍にとどまっています。ナスダック総合指数の平均予想PERが24.8倍であることを考えると、マイクロンは市場平均の半分以下の評価しか受けていないことになります。

一見すると、これは「超割安」に見えます。しかし、この低いPERには明確な理由があります。

メモリ半導体に残る市況サイクルへの警戒

マイクロンが低PERに置かれている最大の理由は、メモリ半導体業界特有の市況サイクルです。

メモリ市場は、需要が強い局面では価格が大きく上昇し、企業利益も急拡大します。一方で、供給過剰に転じると価格が急落し、利益が一気に縮小することがあります。過去の投資家は、この激しい好不況の波を何度も経験してきました。

現在のマイクロンは、AI向け需要の拡大によって非常に強い利益成長が期待されています。しかし市場は、「今の高収益が長期間続くのか」という点については慎重です。つまり、10.2倍という予想PERは、単なる割安評価ではなく、「現在の利益は一時的なピークかもしれない」という警戒感の表れでもあります。

ここがマイクロン投資の難しいところです。AI需要によってメモリ市場の構造が変わるのか、それとも従来通りいずれ供給過剰に戻るのか。この見極めが、今後の株価を大きく左右すると考えられます。

ゴールドマンが目標株価を900ドルに引き上げても中立の理由

こうした慎重な見方を示しているのが、ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジェームズ・シュナイダー氏です。

同氏はマイクロンの目標株価を従来の400ドルから900ドルへ大幅に引き上げました。これは、マイクロンの企業価値や利益水準に対する見方が大きく改善したことを示しています。

しかし、投資判断は「中立(Neutral)」のまま据え置かれました。ここが非常に重要です。

直近の6月12日の終値は981.61ドルであり、新たな目標株価である900ドルをすでに上回っています。つまり、ゴールドマンはマイクロンの成長を認めつつも、現在の株価にはすでに相当な期待が織り込まれていると見ているわけです。

シュナイダー氏は、標準化EPSを50.00ドルと想定し、そこに18倍のPERを適用することで900ドルという適正価格を算出しています。この考え方は、足元の利益が極端に強い一方で、長期的な巡航利益を冷静に見積もろうとするものです。

2027年EPSピーク予想が示す重要な分岐点

今後の最大の焦点は、マイクロンの利益がいつピークを迎えるのかという点です。

ゴールドマン・サックスは、マイクロンのEPSが2027会計年度に138.86ドルでピークを迎えると予想しています。もしこの見方が正しければ、株式市場はそのかなり前から業績鈍化を織り込み始める可能性があります。

一般的に、株価は実際の業績ピークよりも半年から1年ほど早く天井をつけることがあります。つまり、2027年に利益がピークアウトするなら、2026年後半から投資家の関心は「成長の加速」ではなく「利益水準の持続性」へ移っていく可能性があります。

この点で、マイクロンはまさに重要な局面にあります。AI需要が一過性のブームではなく、長期契約や構造的な需要として定着するのか。それとも、供給拡大によって数年後に利益率が低下するのか。市場はその答えを探っている段階です。

6月24日の決算で問われるのは利益の持続力

マイクロンがAI革命の大きな恩恵を受けていることは間違いありません。HBMを中心とする高付加価値メモリの需要拡大は、同社の収益構造を大きく変える可能性があります。

ただし、株価はすでに過去1年間で大幅に上昇しており、短期的にはかなり多くの好材料を織り込んでいるようにも見えます。そのため、次の決算では単に売上や利益が市場予想を上回るだけでは不十分かもしれません。

投資家が本当に知りたいのは、「この高収益がどれだけ長く続くのか」です。特に、AI向けメモリの長期契約、供給能力、価格動向、顧客需要の継続性が重要なチェックポイントになるでしょう。

6月24日に予定されている次回決算は、マイクロンが単なるメモリ市況株から、AIインフラを支える構造的成長企業へと評価を変えられるかを見極める重要なイベントになりそうです。

情報ソース: Barron’s: “Why Goldman Is Cautious on Micron Stock Ahead of Earnings” (By Adam Clark and Anita Hamilton, June 12, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「マイクロン株11.7%急騰、AIメモリ相場はまだ終わっていないのか

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