サイバーセキュリティ大手のZスケーラー(ZS)が発表した2026年度第3四半期決算は、表面的には決して悪い内容ではありませんでした。売上高と調整後利益はいずれも市場予想を上回り、通期の売上高見通しも引き上げられました。
それにもかかわらず、決算発表後の株価は大きく下落しました。市場が問題視したのは、足元の業績ではなく、第4四半期の売上高ガイダンスが市場予想をわずかに下回った点です。
今回の動きは、AI関連やサイバーセキュリティ関連の成長株に対して、投資家がどれほど高い期待を織り込んでいるかを示す象徴的な出来事といえます。
第3四半期決算は市場予想を上回る内容
Zスケーラーの2026年度第3四半期売上高は、前年同期比25%増の8 億5050 万ドルとなりました。市場予想の8 億3560 万ドルを上回っており、同社の事業が引き続き成長していることを示しています。
調整後EPSは1.08 ドルとなり、こちらも市場予想の1.01 ドルを上回りました。売上と利益の両面で予想を超えたという意味では、決算そのものは堅調だったと評価できます。
一方で、GAAPベースの純損益は1390 万ドルの赤字となりました。前年同期の410 万ドルの赤字から損失が拡大しており、積極投資や買収関連費用が利益を圧迫している可能性があります。
この点は、成長性を重視する投資家にとっては許容範囲かもしれませんが、金利やバリュエーションに敏感な市場環境では、見過ごされにくい要素です。
ガイダンスは上方修正でも市場は満足せず
同社は第4四半期の売上高について、8 億7500 万ドル〜8 億7800 万ドルを見込んでいます。調整後EPSは1.08 ドル〜1.09 ドルの予想です。
一見すると悪くない見通しですが、第4四半期売上高ガイダンスの上限が市場予想の8 億7860 万ドルにわずかに届きませんでした。その差は約60 万ドルにすぎません。
しかし、成長株にとっては、この小さな差が大きな意味を持ちます。高い株価評価を維持するには、実績だけでなく将来見通しでも市場予想を明確に上回る必要があります。今回のZスケーラーは、その期待値をわずかに下回ったことで、株価が大きく調整する結果となりました。
通期の売上高ガイダンスは33 億2000 万ドルから33 億3000 万ドルへと引き上げられました。それでも市場は、第4四半期の成長ペース鈍化の可能性により強く反応した形です。
株価急落の背景にある「完璧な成長」への期待
決算発表後、Zスケーラー株は翌27日の米国市場で一時32%近く急落しました。第3四半期の実績が良好だったにもかかわらず、ここまで売られた理由は、株価がすでに高い成長期待を織り込んでいたためです。
特にAI関連やサイバーセキュリティ関連の銘柄は、将来性への期待が大きい分、少しでも成長鈍化の兆しが見えると、バリュエーションの修正が一気に進みます。
Zスケーラーの場合、決算前の5月だけで株価が45%上昇していました。そのため、投資家の期待値はかなり高い状態にあったと考えられます。そこに第4四半期ガイダンスの小幅な未達が重なり、利益確定売りと失望売りが同時に出た可能性があります。
AIセキュリティ企業への転換を急ぐZスケーラー
今回の決算で注目すべきもう一つのポイントは、ZスケーラーがAIセキュリティ分野への展開を強めていることです。
同社はデータセキュリティ企業のシンメトリーシステムズ買収を発表しました。これに加え、過去数年間でレッドカナリー、SPLX、スクエアX、アバラーなども買収しています。
これらの動きは、Zスケーラーが単なるネットワークセキュリティ企業から、AI時代の統合型セキュリティプラットフォームへ進化しようとしていることを示しています。
生成AIや自律型AIエージェントの普及が進めば、企業のセキュリティリスクはより複雑になります。データ保護、脅威検知、アクセス管理、クラウド環境の監視などを一体的に提供できる企業の重要性は、今後さらに高まる可能性があります。
Zスケーラーは、2026年度末までにAIセキュリティ事業の年間経常収益(ARR)が5 億ドルを超える見込みだとしています。この数字は、同社のAI関連ビジネスが単なる将来構想ではなく、実際の売上基盤として育ちつつあることを示しています。
買い場か、それとも成長鈍化の警告か
今回の急落をどう見るべきかは、投資家の時間軸によって大きく変わります。
短期的には、ガイダンスが市場予想を下回ったことや、GAAPベースで赤字が拡大していることは警戒材料です。株価が高い期待を織り込んでいた以上、今後も業績見通しが少しでも弱ければ、追加の株価調整が起きる可能性があります。
一方で、中長期的には、サイバーセキュリティ需要そのものは拡大が続くと考えられます。クラウド化、AI活用、リモートワーク、データ保護規制の強化など、企業がセキュリティ投資を減らしにくい構造的な追い風があるためです。
ZスケーラーがM&AによってAIセキュリティ機能を強化し、買収した企業の技術を自社プラットフォームにうまく統合できれば、今回の株価下落は長期投資家にとって魅力的なエントリーポイントになる可能性があります。
ただし、そのためには売上成長だけでなく、収益性の改善も必要です。今後の決算では、AIセキュリティ事業のARR拡大、営業利益率の改善、GAAPベースでの赤字縮小が重要な確認ポイントになります。
まとめ
Zスケーラーの第3四半期決算は、売上高と調整後EPSが市場予想を上回る堅調な内容でした。しかし、第4四半期の売上高ガイダンスが市場予想をわずかに下回ったことで、株価は大きく下落しました。
これは、同社の事業が崩れたというよりも、高すぎた市場期待が修正された結果と見ることができます。
Zスケーラーは、AI時代のサイバーセキュリティ企業へと進化するために、積極的なM&Aを進めています。この戦略が成功すれば、同社はクラウドセキュリティからAIセキュリティまでをカバーする重要企業として、再評価される可能性があります。
一方で、成長株としての評価を維持するには、売上成長だけでなく、利益体質への転換も欠かせません。今回の急落は、Zスケーラーの将来性を否定するものではありませんが、成長株投資における期待値管理の重要性を改めて示した出来事といえます。
情報ソース: Barron’s: “Zscaler Stock Plunges 21% on Weak Fourth-Quarter Guidance” (By Kit Norton, May 27, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「サイバーセキュリティ株に復活の兆し AI時代に需要が拡大する理由」
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