ファーウェイの新技術「LogicFolding」は半導体業界を変えるのか EUVに頼らない独自路線の衝撃

  • 2026年5月26日
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2026年5月25日、半導体業界の今後を考えるうえで重要な発表がありました。ファーウェイの半導体部門トップであるHe Tingbo氏が、EUV(極端紫外線)露光装置に依存しない新たなチップ製造ロードマップを明らかにしたためです。

ブルームバーグの報道によると、ファーウェイは新技術「LogicFolding」を軸に、最先端半導体の製造でTSMC(TSM)との差を縮めようとしています。米国の輸出規制によって、ASMLホールディング(ASML)のEUV装置を利用できない状況が続くなか、中国勢がどこまで独自技術で追い上げられるのかが注目されています。

今回の発表は、単にファーウェイの技術開発に関するニュースではありません。半導体サプライチェーンの分断、中国国内の自立化、そして最先端チップ製造の常識が変わる可能性を示す出来事です。

TSMCとの差は本当に縮まるのか

現在、最先端半導体の分野では、TSMCが圧倒的な存在感を持っています。同社は世界の大手テクノロジー企業向けに高性能チップを製造しており、エヌビディア(NVDA)やアップル(AAPL)などにとっても欠かせない存在です。

一方、中国勢は米国の輸出規制により、最先端の製造装置や設計環境へのアクセスが制限されています。そのため、ファーウェイや中芯国際集成電路製造は、TSMCに対して約5年遅れていると見られてきました。

しかし、今回示されたロードマップでは、TSMCが2028年に1.4nmの量産を始める見通しであるのに対し、ファーウェイは2031年に1.4nmの製造開始を目指すとされています。単純に比較すれば、差は約3年に縮まる可能性があります。

もちろん、半導体業界における3年の差は非常に大きな意味を持ちます。最先端AIチップやスマートフォン向けプロセッサーでは、性能や消費電力の差が製品競争力に直結するためです。

それでも、EUV装置を使えない環境で1.4nm級の製造を目指すという点は重要です。仮に2031年に実用化できれば、中国国内市場では十分な競争力を持つ代替技術になる可能性があります。特に、中国独自のAIインフラやスマートフォン、通信機器向けチップでは、西側の最先端チップと完全に同等でなくても、実用上は大きな意味を持つはずです。

LogicFoldingが示す「微細化以外」の成長戦略

今回の発表で最も注目されるのが、新しいアーキテクチャ「LogicFolding」です。

従来の半導体競争は、トランジスタをどれだけ小さくし、どれだけ多く詰め込めるかという微細化競争が中心でした。これは、インテル(INTC)の共同創業者ゴードン・ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」に基づく考え方です。

しかし、ファーウェイは「Tau Scaling Law(Her’s Law)」と呼ばれる独自の考え方を掲げ、微細化だけに頼らない性能向上を目指しています。報道によると、過去6年間で同社は381個のチップを設計・製造してきたとされています。

LogicFoldingは、トランジスタ数の増加やデータ伝送速度の最適化を通じて性能を高めるアプローチです。これは、最先端露光装置に頼れないという制約のなかで生まれた技術ですが、見方を変えれば、半導体の進化を「微細化一辺倒」から「設計と構造の工夫」へ広げる動きともいえます。

自己整合クアッドパターニング(SAQP)のような既存設備を活用した技術と組み合わせれば、EUVを使わずに一定水準の高性能チップを作る道が開ける可能性があります。

これはASMLにとっても無視できない動きです。これまで最先端半導体の世界では、EUV装置が事実上の必須技術と見なされてきました。もしファーウェイが別ルートで高性能チップを量産できることを証明すれば、EUVの絶対的な優位性に対する見方も変わる可能性があります。

中国半導体サプライチェーンへの波及

市場は今回の発表に強く反応しました。25日の発表後、中芯国際集成電路製造の株価は18%超上昇し、華虹半導体は20%上昇してストップ高となりました。

この反応は、単なる短期的な期待感だけではないと考えられます。投資家は、ファーウェイを中心とした中国半導体サプライチェーン全体の成長可能性を意識し始めています。

ファーウェイは今秋、「LogicFolding」を初めて採用した新しい「Kirin」モバイルチップを発売する予定とされています。また、昨年9月にはエヌビディアの代替を狙うAIチップの3カ年ロードマップも発表しています。

つまり、ファーウェイの戦略はスマートフォン向けチップだけにとどまりません。AIチップ、通信機器、クラウドインフラ、そして中国国内のデータセンター市場まで視野に入れたものです。

中芯国際集成電路製造や華虹半導体のような中国ファウンドリ企業にとって、ファーウェイは巨大な顧客であると同時に、技術開発の実験場でもあります。西側の最先端技術にアクセスできない制約がある一方で、中国国内には大きな需要があります。この需要を取り込みながら技術を磨ける点は、中国勢にとって大きな強みです。

半導体業界は多極化へ向かう

ファーウェイの計画がすべて予定通りに進むかは分かりません。最先端半導体の製造は非常に難しく、歩留まり、量産安定性、コスト、消費電力など、解決すべき課題は多く残されています。

ただし、今回の発表が示しているのは、半導体業界が以前のような単一のグローバルサプライチェーンに戻る可能性が低くなっているという現実です。

米国主導の輸出規制により、中国は最先端技術へのアクセスを制限されています。その結果、中国は自国だけで完結する半導体エコシステムを作る方向へ進んでいます。これは短期的には非効率を生む可能性がありますが、長期的には西側とは異なる技術体系を持つ巨大市場が形成されることを意味します。

LogicFoldingが実際に高い性能を示せば、ファーウェイは単なる制裁下の企業ではなく、独自技術で生き残る半導体プレーヤーとして再評価される可能性があります。

特に今秋に登場予定の新しいKirinチップは、その実力を確認する最初の重要な試金石になります。もし市場の期待を上回る性能を示せば、中国半導体関連企業への見方は大きく変わるかもしれません。

ファーウェイの新技術は、半導体の歴史をただちに塗り替えるものとは言い切れません。しかし、EUVに頼らない独自路線が一定の成果を出し始めていることは、半導体業界の未来を考えるうえで重要です。

今後の半導体産業は、TSMCやASMLを中心とする西側エコシステムと、ファーウェイや中芯国際集成電路製造を中心とする中国エコシステムに分かれていく可能性があります。その意味で、LogicFoldingは単なる新技術ではなく、半導体業界の多極化を象徴する存在になるかもしれません。

情報ソース: Bloomberg: “Huawei Touts Chip Breakthrough to Shorten Gap With TSMC” (By Bloomberg News, May 25, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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