サービスナウ株が急騰 AI時代のソフトウェア株復活を示す重要サイン

  • 2026年5月19日
  • 2026年5月19日
  • BS余話

2026年5月18日の米国株式市場で、ワークフロー管理ソフトウェア大手のサービスナウ(NOW)が大きく買われました。同社株は8.8%上昇し、S&P500構成銘柄の中でも上位のパフォーマンスとなりました。

ここ数ヶ月、米国株市場では「生成AIの普及によって、従来型のエンタープライズソフトウェア企業は成長力を失うのではないか」という懸念が広がっていました。AIエージェントが人間の業務を代替するようになれば、従業員数に応じて課金するSaaSモデルは逆風を受けるという見方です。

しかし、サービスナウの急騰は、こうした悲観論がやや行き過ぎていた可能性を示しています。AIはソフトウェア企業にとって脅威であると同時に、新たな売上機会を生み出す成長ドライバーにもなり得るからです。

バンク・オブ・アメリカの強気評価が買い材料に

今回の株価上昇の直接的なきっかけとなったのは、バンク・オブ・アメリカによる強気の投資判断です。同社のアナリストは、サービスナウ株のカバレッジを買い推奨で再開し、目標株価を130ドルとしました。

この評価を受けて、投資家の間ではサービスナウの成長力を見直す動きが広がりました。同社株は年初から大きく下落していたため、割安感を意識した買いも入りやすい状況にありました。

特に注目されたのは、サービスナウがAI時代に対応した価格モデルへ移行しようとしている点です。市場はこれまで、AIによる業務効率化がソフトウェア企業の座席数課金モデルを圧迫すると懸念していました。しかし、サービスナウはそのリスクを逆手に取り、AIの利用量に応じて課金する新たな成長モデルを打ち出しています。

席数課金からAI消費課金への転換

従来のSaaS企業は、利用する従業員数が増えるほど売上が拡大する仕組みを採用してきました。いわゆる席数課金モデルです。

しかし、AIエージェントの導入が進めば、人間が直接ソフトウェアを操作する時間は減る可能性があります。この点だけを見れば、従来型のソフトウェア企業にとって逆風に見えます。

一方で、AIが企業内で処理する業務量は大きく増加すると考えられます。人間の作業時間が減っても、AIが実行するタスク、分析、承認、問い合わせ対応、ワークフロー処理は増えていく可能性があります。

サービスナウは、この変化に対応するため、AIの消費量に応じたハイブリッド型の価格モデルを導入しようとしています。さらに、顧客が高機能なAIバンドルへ移行することで、平均単価が20%〜30%上昇する可能性があるとされています。

これは、ソフトウェア企業にとって非常に重要な意味を持ちます。AIによって従来の座席数課金が弱まるとしても、AI利用量に応じて課金できる仕組みを構築できれば、むしろ売上拡大の余地が生まれるからです。

フィグマの事例が示すAI課金の可能性

この流れは、サービスナウだけに限られません。デザインプラットフォームを展開するフィグマ(FIG)も、AI機能の利用に応じた課金モデルで注目されています。

同社の決算では、ヘビーエンタープライズユーザーの多くが月間利用上限に達した後、追加クレジットを購入していたことが明らかになりました。これは、企業ユーザーがAI機能に実際の価値を感じ、その利用に追加料金を支払う意思があることを示しています。

つまり、AIはソフトウェア企業の価格決定力を奪うのではなく、うまく設計すれば新たな価格決定力を生み出す可能性があります。今後のソフトウェア株を見るうえでは、単にAI機能を搭載しているかどうかではなく、そのAI機能をどのように収益化できるかが重要になります。

AIエージェント時代の管制塔を狙うサービスナウ

サービスナウの強みは、単にAI機能を提供することだけではありません。同社はすでに多くの大企業の業務ワークフローに深く組み込まれており、IT、顧客対応、人事、セキュリティなど幅広い業務プロセスの基盤となっています。

AIエージェントが企業内で本格的に使われるようになると、企業は「AIがどの業務を実行しているのか」「権限は適切か」「セキュリティ上の問題はないか」といった管理体制を強く求めるようになります。

この点で、サービスナウはAIエージェントの管制塔としての役割を担える位置にいます。すでに企業の業務データや承認フローに接続しているため、AIの実行管理やガバナンスを提供するうえで有利な立場にあります。

また、同社がサイバーセキュリティ関連企業の買収を進めていることも重要です。AIエージェントが企業内で動く時代には、ワークフロー管理とセキュリティ管理を一体化することが競争力になります。サービスナウはこの領域で、他社が簡単に模倣しにくいポジションを築こうとしています。

ソフトウェア株復調の兆し

サービスナウの急騰は、同社単独の好材料にとどまらない可能性があります。ここ最近、サイバーセキュリティ株やインフラストラクチャ・ソフトウェア株にも底堅い動きが見られます。主要ソフトウェアETFであるIGVも過去1ヶ月で上昇しており、ソフトウェアセクター全体に見直し買いが入り始めている印象です。

これまでAI関連の投資資金は、エヌビディア(NVDA)を中心とする半導体株や、クラウドインフラ企業に集中してきました。しかし、AIインフラの整備が進むにつれて、その上で実際に業務を動かすアプリケーション企業にも注目が移り始めています。

特に、サービスナウのようにAIを既存事業の脅威ではなく、価格モデルを進化させる武器として活用できる企業は、今後のソフトウェア株復調の中心になる可能性があります。

投資家が見るべきポイント

今回のサービスナウ株の急騰は、AI時代のソフトウェア投資を考えるうえで重要なサインです。

投資家が注目すべきなのは、AIによってソフトウェア企業が一律に不要になるわけではないという点です。むしろ、企業の業務プロセスに深く入り込み、AI利用量に応じた課金モデルを確立できる企業は、AI時代に売上成長を加速させる可能性があります。

もちろん、すべてのソフトウェア企業がこの流れに乗れるわけではありません。AI機能を追加しただけで収益化できない企業や、顧客基盤が弱い企業は厳しい競争にさらされます。

一方で、サービスナウのように企業ワークフローの中核を押さえ、AIエージェントの管理やガバナンスまで提供できる企業は、今後も高い競争力を維持する可能性があります。

AI相場の主役はこれまで半導体でした。しかし、次の段階では、AIを実際の業務価値に変換できるソフトウェア企業にも資金が向かう可能性があります。5月18日のサービスナウ株急騰は、その転換点を示す出来事だったと言えます。

情報ソース:MarketWatch “ServiceNow’s stock heads for best day in a year — flashing a green light for the software sector”(By Christine Ji, May 18, 2026)

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

*過去記事「ソフトウェア株はなぜ急落したのか?IBM・サービスナウ決算から読み解くセクター全体の構造的課題

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