シスコ株19%急伸の理由 好決算が示したAIデータセンター需要の強さ

  • 2026年5月14日
  • 2026年5月14日
  • BS余話

AIブームの恩恵を受ける米国株として、多くの投資家がまず思い浮かべるのはエヌビディア(NVDA)や半導体関連銘柄です。しかし、AIデータセンターの成長を支えるのはGPUだけではありません。大量のAIサーバーを高速かつ安定的につなぐネットワーク機器も、AIインフラに欠かせない重要な役割を担っています。

その中で注目されているのが、ネットワーク機器大手のシスコ・システムズ(CSCO)です。同社は5月13日の米国市場終了後に発表した第3四半期決算で、市場予想を上回る売上と利益を示しました。株式市場では、シスコを従来型のネットワーク企業としてではなく、AI時代のインフラ銘柄として見直す動きが強まっています。

第3四半期決算は売上・利益ともに市場予想を上回る

シスコが発表した第3四半期決算では、売上高が158億ドルとなり、市場予想の156億ドルを上回りました。調整後1株当たり利益は1.06ドルとなり、こちらもアナリスト予想の1.03ドルを上回っています。

特に注目されたのは、主力であるネットワーキング部門の好調さです。同部門の売上高は88億2000万ドルとなり、ウォール街の予想である84億4000万ドルを大きく上回りました。これは、企業やクラウド事業者によるネットワーク投資が底堅く推移していることを示しています。

第4四半期の見通しも強気でした。会社側は売上高を167億ドル〜169億ドル、調整後1株当たり利益を1.16ドル〜1.18ドルと予想しています。市場予想は売上高158億ドル、調整後1株当たり利益1.08ドルだったため、ガイダンスはかなり前向きな内容だったといえます。

この決算発表を受けて株価は14日のプレマーケットで19%急伸しました。なお、13日の通常取引終値時点ですでに年初来で32%上昇しており、過去1年では66%の上昇を記録しています。

AIデータセンター需要がシスコを押し上げる

今回の決算で最も重要なのは、AIインフラ向けの需要がシスコの成長を支えている点です。メタ・プラットフォームズ(META)をはじめとする巨大IT企業は、AIモデルの開発や運用に向けて大規模なデータセンター投資を続けています。

AIサーバーは単体で動くだけでは十分な力を発揮できません。膨大な数のGPU、ストレージ、サーバーを低遅延で結び、データを効率よく流すネットワークが必要です。つまり、AIデータセンターにおいてネットワーク機器は血管や大動脈のような存在です。

これまでシスコは、成熟したネットワーク機器企業という印象が強く、高成長のAI銘柄としては見られにくい面がありました。しかし今回の決算は、同社がAIインフラの重要な受益者になり得ることを示しました。AI投資の広がりがGPUだけでなく、ネットワーク、電力、冷却、ストレージなど周辺インフラへ波及していることが確認できます。

人員削減はAIシフトに向けた再配分

一方で、シスコは全従業員の5%未満にあたる約4000人の人員削減も発表しました。好調な決算と同時に人員削減が発表されたため、一見すると矛盾しているようにも見えます。

ただし、今回の人員削減は単純な業績悪化への対応というより、成長分野へ経営資源を集中させるための再編と見るべきです。ハイテク業界では、AI関連分野への投資を強化する一方で、成長性の低い部門や重複する事業を見直す動きが広がっています。

シスコにとっても、今後の成長の中心はAIデータセンター、セキュリティ、クラウド関連のネットワーク需要です。人員削減は痛みを伴う施策ですが、同社がAI時代に合わせて事業構造を組み替えているサインともいえます。

課題は粗利益率の低下

好決算の一方で、投資家が注意すべき点もあります。それが粗利益率の低下です。第3四半期の粗利益率は66%となり、アナリスト予想の66.2%や前年同期の68.6%を下回りました。

背景には、AI関連需要の急増による部材コストの上昇があります。特にメモリーなど一部部品の価格上昇は、ネットワーク機器メーカーにとって利益率を圧迫する要因になります。売上が伸びても、部材コストがそれ以上に上昇すれば、利益の伸びは限定されます。

シスコは価格引き上げによってコスト上昇を吸収しようとしています。しかし、継続的な値上げがどこまで顧客に受け入れられるかは不透明です。AIインフラ需要が強いとはいえ、競争環境が厳しくなれば、価格転嫁力が中長期的な利益成長を左右することになります。

AI相場は半導体からインフラ全体へ広がる

シスコの株価は今年に入って大きく上昇しており、市場は同社をAIインフラ関連銘柄として再評価し始めています。これは、AI相場がエヌビディアや半導体メーカーだけに集中する段階から、データセンター全体を支える企業へ広がる段階に入っていることを示しています。

AIの普及が進むほど、ネットワークの重要性は高まります。AIモデルの学習や推論では、大量のデータがサーバー間を高速に移動します。そのため、データセンターの性能はGPUの性能だけでなく、ネットワークの処理能力にも左右されます。

シスコは、この分野で長年の顧客基盤と技術力を持っています。今後、AIデータセンター向けのネットワーク需要がさらに拡大すれば、同社は安定成長企業からAIインフラ銘柄へと評価を変える可能性があります。

まとめ

シスコの最新決算は、AIインフラ需要がネットワーク機器市場にも波及していることを示す内容でした。売上高、調整後利益、ネットワーキング部門の売上、第4四半期ガイダンスはいずれも市場予想を上回り、同社の事業環境が想定以上に強いことが確認されました。

一方で、粗利益率の低下や部材コストの上昇は無視できない課題です。AI需要が強くても、利益率を維持できなければ株価の上昇余地は限られます。今後は、売上成長だけでなく、価格転嫁力とコスト管理が重要になります。

AI時代の主役は半導体だけではありません。サーバーをつなぎ、データを流し、AIデータセンター全体を機能させるネットワークも不可欠です。シスコは、AI時代の大動脈を担う企業として、今後も注目すべき銘柄の一つです。

情報ソース: Barron’s: “ Cisco Earnings and Revenue Beat Estimates on Strong AI Demand. Its Shares Surge.” (By Angela Palumbo, May 13, 2026)

※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「AIインフラの真の勝者は?アリスタが決算で見せたシスコを圧倒する実力

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