オールドテック復活相場が始まった AIインフラ需要で米国株の主役が交代

米国の株式市場を牽引する主役が、静かに、しかし劇的に交代しつつあります。数十年にわたり過去の遺物と見なされがちだったレガシー・テクノロジー企業(オールドテック)が、現在、驚異的な成長企業として再評価されています。

本記事は、米国の投資情報メディア「バロンズ」の記事が報じた事実情報を元に、現在の市場の構造変化と、主要企業の今後の将来性について分析・考察するものです。

マクロ視点:S&P 500の利益成長を牽引する構造的変化

【事実情報】
・ S&P 500の通期利益成長のコンセンサス予想(アナリスト予想の平均)が、2月時点の15%から21%へ大幅に上方修正された。
・ シーポート・リサーチ・パートナーズのジョナサン・ゴラブ氏によれば、半導体企業などがアナリストの予想を上回る強気な業績見通しを発表しており、アナリストが予想を引き上げざるを得ない状況となっている。

【分析・考察】
S&P 500全体という巨大な指数の利益成長予想が、わずか数ヶ月で6ポイントも上方修正されるのは特筆すべき事態と言えます。

さらに重要なのは、外部の専門家であるアナリストの予測を、当事者である企業自身の強気な見通しが凌駕しているという点です。

これは、一部の企業の一過性の特需ではなく、市場全体に波及するような大規模な設備投資やインフラ構築の波が起きていることを強く示唆しています。後述する各企業のデータを見る限り、この上方修正の大部分は、データセンターやクラウドを支えるハードウェアおよび半導体セクターの歴史的な業績拡大によってもたらされていると推測できます。

メモリ・ストレージ市場の異常な熱狂とバリュエーションの歪み

【事実情報】
マイクロン・テクノロジー(MU):過去1年で株価約600%上昇。2027年8月までの2年間で利益が10倍になる予想。それにもかかわらず予想PERは5.8倍(S&P 500で3番目に低い)。
シーゲイト・テクノロジー(STX):過去1年で株価718%上昇。ハードドライブはクラウドストレージの約80%を占める。

【分析・考察】
マイクロン・テクノロジーとシーゲイト・テクノロジーは共に1970年代後半設立の企業ですが、過去1年で600から700%超という新興スタートアップのような株価急騰を見せています。ここで最も注目すべきは、マイクロンの利益10倍予想と予想PER5.8倍という極端な不均衡(歪み)です。

通常、これほどの利益成長が見込まれる企業のPERは数十倍に跳ね上がりますが、5.8倍に留まっている事実は、市場がこの特需をまだ一過性のサイクルだと疑っているか、あるいは株価の上昇スピード以上に利益の拡大スピードが凄まじい(業績が株価を追い抜いている)かのどちらかを意味します。

クラウドストレージの80%を握るシーゲイトの急騰も併せて考えると、データ保存領域のインフラ需要は市場の想像を絶する規模に達しており、これらの銘柄は依然として強い割安感を内包していると評価できます。

国家戦略としてのインテルと期待先行のバリュエーション

【事実情報】
インテル(INTC):過去1年で株価約400%上昇。26年ぶりにドットコムバブル期のピークを更新。米国政府が10%の株式を取得。予想PERは84倍。アナリストの強気姿勢は7%から31%へ急増。

【分析・考察】
1968年設立のインテルが、26年間の沈黙を破りドットコムバブルの最高値を更新したことは、単なる業績回復以上の意味を持ちます。最大の転換点は米国政府による10%の株式取得(CHIPS法関連)です。

予想PERが84倍という数字は、前述のマイクロン・テクノロジー(5.8倍)と比較すると異常なほどの割高水準にあります。つまり現在のインテルの株価は、足元の純粋な業績だけでなく、米国の国家安全保障とサプライチェーン再構築の中核を担う企業という国家戦略的なプレミアムが大きく上乗せされている状態です。

政府という巨大な後ろ盾を得たことで、長らく低迷していたアナリストの強気評価の割合(7%から31%へ)も好転していますが、この高いPERを正当化するためには、2020年代後半に向けて実際に圧倒的な利益成長を実現することが不可欠となります。

インフラを支える堅実なバリュー・プレイ

【事実情報】
デル・テクノロジーズ(DELL):過去1年で株価132%上昇。予想PERは16倍。
ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE):過去1年で株価78%上昇。予想PERは11倍。

【分析・考察】
半導体やストレージ企業が数百パーセントの暴騰を演じる中、サーバー等を提供するデル(1984年設立)やHPE(1939年設立のルーツを持つ)も着実に株価を伸ばしています。

注目すべきは、デルがPER16倍、HPEがPER11倍という、市場平均(S&P 500)と比較しても非常に健全かつ割安なバリュエーションを保っている点です。

どんなに高性能なチップや大容量のメモリが開発されても、最終的にそれらを組み込んで稼働させるサーバー基盤がなければ機能しません。デルとHPEは、熱狂の渦中にあるテクノロジー市場において、ダウンサイドリスク(下落余地)が相対的に小さく、投資家にとって最も手堅くインフラ特需の恩恵を受けられるバリュー銘柄としての地位を確立していると分析できます。

結論

現在の米国市場を牽引しているのは、真新しい企業ではなく、1930年代から1980年代に産声を上げたオールドテックたちです。

政府の強力な支援を背景に高い期待を集めるインテル、爆発的な利益成長に対してバリュエーションの歪みが生じているマイクロン・テクノロジー、そして手堅いインフラを支えるデル・テクノロジーズやヒューレット・パッカード・エンタープライズ。

これら企業の数字は、現在の相場が単なる期待先行のバブルではなく、実体経済における強力な設備投資に裏付けられた巨大なインフラ更新サイクルであることを明確に物語っています。

情報ソース: Barron’s: “AI Is Now the Bull Case for the Broader Market—Enough to Even Revive Old Tech” (By Jack Hough, May 01, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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