インテル株が時間外で急騰 PER92倍でも投資家が熱狂する理由

  • 2026年4月24日
  • 2026年4月24日
  • BS余話

長らく低迷が囁かれていた半導体の巨人、インテル(INTC)は、4月23日のマーケット終了後に第1四半期決算を発表しました。まずは、バロンズ誌が報じたこの決算の内容と、同社を取り巻く直近の事実情報から整理します。

インテルの第1四半期決算および直近の動向

【業績とガイダンス】

第1四半期の調整後1株当たり利益(EPS)は29セントと、市場予想の2セントを大幅に上回りました。売上高は前年同期比7%増の136億ドルで、こちらも市場予想の124億ドルを超えています。特にデータセンター部門の売上高は前年比22%増を記録しました。

第2四半期のガイダンスについては、売上高成長率の予測レンジ中央値で11%増を見込んでいます。

【損失と再編費用】

製造(ファウンドリ)部門では24億ドルの損失を計上しました。また、自動車用半導体子会社であるモービルアイののれん代減損処理に関連して、41億ドルの再編費用を計上しています。

【株価とバリュエーション】

この決算発表を受けた時間外取引で、株価は19.2%上昇し、79.6ドルを記録しました。これは2000年8月に記録した最高値74.88ドルを上回る水準です。一方で、予想株価収益率(PER)は今後12ヶ月の予想EPSに対して過去最高の92倍に達しています(S&P 500指数は約21倍)。

【提携と事業展開】

リップ・ブー・タン新CEOの下で、以下の動きが確認されています。

・米国政府に株式の9%を売却。

・エヌビディア(NVDA)と提携し、同社に4.5%の株式を割り当て。

・アポロ・グローバル・マネジメント(APO)に以前売却した工場の一部を買い戻し。

・テスラ(TSLA)やスペースXを率いるイーロン・マスク氏の企業と提携。マスク氏は4月22日に、新工場「テラファブ」にて2028年稼働予定のインテルの「14A」製造プロセスを利用する計画を明らかにしました。

「捨てる」覚悟と「稼ぐ」力の復活:本業回帰の鮮明化

今回の決算で最も注目すべきは、見出しになりやすい株価の急騰ではなく、その裏にある財務のメリハリです。

データセンター部門の売上高が前年比22%増と力強い回復を見せた一方で、モービルアイ関連の41億ドルもの再編費用や、製造部門での24億ドルの損失を出しています。

この極端な数字のコントラストは、インテルが過去の負の遺産を大胆に清算し、将来のコア事業へ資金を集中させていることの明確な証左です。かつて71%あったデータセンター向け収益シェアが昨年7%まで激減した絶望的な状況の中で、前年比22%増という成長を叩き出したことは、依然として同社が底力を持っていることを示しています。この本業でのキャッシュ創出力が、今後の巨額の工場投資を支える命綱となります。

かつての敵を味方にする「政治力」と「外交力」

新CEOであるタン氏の真骨頂は、その卓越したディール(取引)メイクの能力にあります。

米国政府を大株主に迎え入れたことは、インテルが国家安全保障上、絶対に潰せない企業(Too big to fail)になったことを意味します。これにより、今後の資金調達や競争において極めて強力な後ろ盾を得たと言えます。

さらに驚異的なのは、自社のシェアを奪い取った最大のライバルであるエヌビディアと資本提携を結んだ点です。競合を「インテルの成功から利益を得るステークホルダー」に変えてしまったこの交渉術により、単なる半導体メーカーから、業界全体を巻き込むプラットフォーマーへと立ち位置を変えつつあります。

イーロン・マスクとの提携:2028年への「超・先行投資」

将来性を占う上で最大の不確実性であり、同時に最大のポテンシャルでもあるのが、マスク氏という世界トップクラスのイノベーターを外部顧客として獲得したことです。これまで身内専用の工場であった製造部門にとって、ファウンドリ事業の正当性を証明する強烈なマーケティング材料になります。

しかし、ここに最大の懸念事項が潜んでいます。マスク氏が採用を明言した14Aプロセスが稼働するのは2028年なのです。

現在、インテルのPERは過去最高の92倍に達しています。これは投資家たちが、2028年の14Aプロセスの大成功や巨大プロジェクトの完遂という数年先の不確実な未来を、すべて今の株価に織り込んでしまっていることを意味します。

結論:新生インテルは買いか、待ちか

事実データから浮かび上がるのは、機動力と政治力を兼ね備えたアグレッシブな挑戦者へと劇的に変貌したインテルの姿です。

しかし、PER92倍というバリュエーションは、今後の開発遅延や製造トラブルを一切許容しない完璧なシナリオを前提としています。もし2028年に向けたロードマップに少しでも狂いが生じれば、株価は大きく調整されるリスクを孕んでいます。

将来性は間違いなく明るい光に包まれていますが、現在の市場の熱狂は少し冷めた目線で見る必要があります。長期的な成長シナリオを信じるのであれば、押し目(一時的な下落)を待つのが賢明な戦略かもしれません。

情報ソース: Barron’s: “Intel Earnings Were Strong Enough to Put the DotCom Bust in the Stock’s Rearview Mirror” (By Adam Levine and Adam Clark, April 23, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「インテル株が急騰する理由 AI時代に再評価される復活シナリオ

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