2025年も残すところあとわずかとなり、投資家の関心はS&P500種株価指数の四半期リバランス(銘柄入れ替え)に向いています。
バロンズの2025年12月1日付の記事によると、今月行われるリバランスの発表が12月5日の金曜日にも迫っているとのことです。本記事では、同記事で報じられた「客観的な事実」をベースに、今回のリバランスが示唆する米国市場の現在地と、投資家が注意すべきポイントを分析します。
「時価総額」は十分でも採用されない理由
S&P500への採用基準として、最も分かりやすい指標は時価総額です。バロンズによれば、現在の新規採用の最低ラインは227億ドルとされています。
しかし、今回の候補リストを分析すると、単にこの数値をクリアしているだけでは不十分であることが浮き彫りになります。
例えば、記事内で言及されているストラテジー(MSTR)は、500億ドルという巨額の時価総額を持ちながらも、採用は「困難」と見られています。その理由は、同社が事業会社というよりも「ビットコインの保管庫」としての性質が強く、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスがクローズドエンド型ファンドやETFの採用を認めていない方針と抵触する可能性があるためです。
また、韓国のEコマース大手クーパン(CPNG)も同様です。登記上の住所は適格要件を満たすデラウェア州にありますが、ビジネスの大半が韓国で行われている点がネックとなり、「可能性は低い」と分析されています。
ここから読み取れるのは、「S&P500は、純粋な米国経済のファンダメンタルズを反映する『事業会社』のクラブである」という委員会の強い意志です。単に株価が上がって時価総額が膨らんだだけでは、この「究極の企業クラブ」への入会チケットは手に入りません。
本命視される4社の共通点とセクター動向
一方で、今回「トップ候補」として名前が挙がっている以下の4社には、現在の米国市場のトレンドが色濃く反映されています。
- CRH(CRH):建設資材・セメント。時価総額は約800億ドルで候補中最大。
- バーティブ・ホールディングス(VRT):データセンター冷却。時価総額500〜750億ドル規模。
- アルナイラム・ファーマシューティカルズ(ALNY):バイオテクノロジー。
- アレス・マネジメント(ARES):代替資産運用。
特に注目すべきはバーティブ・ホールディングスの存在です。データセンター向けの冷却システムを手掛ける同社が有力視されている事実は、AI・クラウド需要に伴うインフラ投資が、依然として市場の主要テーマであることを裏付けています。
また、CRHのような「オールドエコノミー」とも言える建設資材大手が、800億ドルという圧倒的な規模で控えている点も見逃せません。ハイテク(バーティブ/アルナイラム)と実物経済(CRH)、そして金融(アレス)というバランスの取れた候補群は、指数委員会が特定のセクターに偏ることなく、市場全体を網羅しようとする意図の表れと推察されます。
「除外」リスクと投資家への影響
リバランスは「採用」だけのイベントではありません。指数に入る企業があれば、去る企業もあります。
バロンズの記事では、現在のS&P500構成銘柄の中で時価総額が最小クラスの企業として、以下の名前が挙げられています。
- モホーク・インダストリーズ(MHK)
- LKQ(LKQ)
- モリーナ・ヘルスケア(MOH)
2023年以降、2025年第2四半期を除いて毎回入れ替えが発生しているという事実を踏まえると、今回も何らかの銘柄が「降格」となる可能性は極めて高いと考えられます。
投資家としては、新規採用候補への「先回り買い」に目が向きがちですが、保有銘柄の中にこれらの「境界線上の企業」が含まれていないかを確認することも重要です。指数から除外されれば、ETFなどのパッシブ運用資金からの強制的な売り圧力にさらされることになります。
結論
今回のS&P500リバランスは、単なるランキングの更新ではありません。「ビットコイン関連や海外事業比率の高い企業をどう扱うか」という、現代市場特有の課題に対する指数委員会の回答が示される場でもあります。
正式発表は12月5日の遅くに行われる見込みです。CRHやバーティブ・ホールディングスといった「本命」が順当に選ばれるのか、それともサプライズがあるのか。今回のリバランス結果は、2026年に向けた市場の質的変化を占う試金石となります。
情報源: Based on “These Stocks Could Join the S&P 500 in Rebalancing” by Andrew Bary, Barron’s, Dec 01, 2025.
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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