中国の「脱エヌビディア」は本気か?強制的な国産回帰が示唆する米国株投資への影響

エヌビディアの中国収益が直面している「構造的な壁」

現在、投資家が認識すべき最大の事実情報は、中国市場におけるエヌビディア(NVDA)の減速が、単なる景気循環や一時的な在庫調整ではないという点です。ジ・インフォメーションの報道によれば、同社の10月までの3ヶ月間における対中収益は前年同期比で63%減の約30億ドルにまで落ち込みました。

特に衝撃的なのは、対中規制に対応して作られた特化型チップ「H20」の売上推移です。2月から4月には46億ドルを稼ぎ出していましたが、10月期にはわずか5000万ドルへと激減しています。これは99%近い減少幅であり、事実上の市場消失と言えます。現在は中国からの収益の大半をゲーミングチップが占めている状況であり、データセンター部門における中国という巨大な「得意先」は、もはや過去のものとなりつつあると考えられます。

ワシントンではなく「北京」が主導する締め出し

これまで市場の懸念は「米国政府が輸出を止めること」に集中していましたが、潮目は完全に変わりました。今回の収益減の主因は、中国政府による「購入禁止令」にあるからです。

記事によると、バイトダンスなどの中国テクノロジー大手は、本音ではエヌビディア製チップを求めており、2025年には大量の在庫確保に動いていました。しかし、中国の規制当局はこれに待ったをかけ、新規データセンターでの利用をブロックし、テスト購入さえも停止させました。

アリババ・グループ・ホールディング(BABA)やテンセント・ホールディングス(TCEHY)といった企業がクラウドインフラを中国製チップで再構築し始めたのは、企業の自発的な戦略というよりは、当局からの強い圧力による「強制的な転換」です。これは、仮に米国側の規制が緩和されたとしても、売上が戻らない可能性が高いことを示唆しています。トランプ政権下で高性能チップ「H200」の対中販売許可が検討されているとの情報もありますが、北京側が国産チップ採用を国策として強制している以上、これが以前のような収益貢献をもたらすとは考えにくい状況です。

「中国製エコシステム」という新たな競合の出現

エヌビディアにとっての長期的な脅威は、売上の喪失だけにとどまりません。中国が独自のAIエコシステムを確立し、それを新興国へ輸出しようとしている動きは、将来的な市場シェア争奪戦の幕開けを予感させます。

中国政府は、ファーウェイなどの国内企業にリソースを集中させる一方で、地方政府主導で「混合チップクラスター」の構築を進めています。これは、エヌビディア製のチップと中国産のチップなど、異なるメーカーの半導体を混在させて稼働させるシステムのことです。これにより、単一メーカーへの依存を避けつつ、手元にある高性能な米国製チップと、安価だが性能で劣る国産チップをパズルのように組み合わせて、必要な計算能力を確保しようとしています。

さらに重要なのは、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)への依存を減らしつつ、オープンソースモデル(アリババのQwenなど)と安価な国産チップを組み合わせたパッケージを開発している点です。

マレーシアが一時的にファーウェイ製チップの導入を発表した事例(米国の警告により撤回)は、コストに敏感な新興国市場において、中国製パッケージが米国製システムの代替案として機能し始めている証拠です。これまでは「性能のエヌビディア」一択だった市場構造が、「性能の米国製」対「コストと自立の中国製」という二極化構造へ変化していく可能性があります。

投資家への示唆

以上の事実から導き出せる結論は、エヌビディアの成長シナリオから「中国市場の復権」は完全に除外すべきだということです。同社広報担当者が「H20」の生産再開計画がないと明言していることからも、会社側もすでにこの市場に見切りをつけている様子がうかがえます。

今後のエヌビディアの株価を分析する際は、中国以外の市場(欧米および、中国の影響を受けないその他の地域)での需要が、中国での損失分をどれだけカバーし、さらに上積みできるかが焦点となります。中国市場への依存度が高いままの半導体関連銘柄については、地政学リスクが「規制リスク」から「顧客消滅リスク」へと変質している点に十分な注意が必要です。

情報ソース:The Information “China Is Slowly but Surely Breaking Free From Nvidia” (2025/11/26)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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