米投資情報メディア「マーケットウォッチ」は11月18日、ループ・キャピタルのアナリスト、Rob Sanderson氏がアルファベット(GOOGL)の投資判断を「買い」に引き上げ、目標株価を320ドルに設定したと報じました。
2025年の安値から既に株価が倍増している中での強気判断には、単なる「AIブーム」にとどまらない、構造的な評価基準の変化が見て取れます。本記事では、報道されたレポートの内容を参考に、アルファベットの再評価につながっている3つのポイントを整理します。
1. クラウド事業単体での「1兆ドル評価」の衝撃
今回のレポートで特筆すべき点は、Google Cloud事業の評価額です。アナリストは、この部門単体で「1兆ドル(約150兆円超)以上の価値がある」と試算しています。
これまでGoogleといえば「検索広告の会社」という見方が支配的でしたが、クラウド事業のバックログ(受注残)が過去5四半期で2倍以上に急増している事実は、収益構造が大きく変化していることを示唆しています。
競合であるアマゾン(AMZN)のAWSと比較しても、Google Cloudの売上規模はまだ半分以下ですが、その分「成長余地」が大きいとも言えます。アナリストが予測する「2027年にかけてAWSを上回る成長率」が実現すれば、SOTP(Sum of the Parts:事業別評価の合計)での株価見直しが進む可能性があります。
2. 独自半導体「TPU」が差別化の決定打に
AI開発競争において、多くの企業がNVIDIA製GPUの確保に奔走する中、Googleが長年開発してきた独自AIチップ「TPU(Tensor Processing Unit)」の存在感が際立ち始めています。
報道によると、TPUによる価格性能比の高さが、Google Cloudを選択する顧客にとっての「差別化要因」になりつつあるとのことです。 クラウドベンダーが自社で最適化したチップを安価に提供できることは、計算コストが膨大になるAI時代において極めて強力な堀(Moat)となります。単にAIモデル(Gemini)が優れているだけでなく、それを動かす「インフラの経済合理性」で他社をリードできるかが、今後の競争の焦点となりそうです。
3. 「検索不要論」の払拭
2025年初頭、生成AIの台頭により懸念された「Google検索が使われなくなる」というシナリオは、現時点では否定されつつあるようです。
AIチャットボットが普及してもなお、ユーザーが情報探索の入り口としてGoogle検索を選び続けている堅調さが確認されています。アマゾンが検索広告から撤退(2025年7月)するといった市場環境の変化もありましたが、検索事業という「キャッシュカウ(収益の柱)」が揺るがないことは、クラウドやAIへの巨額投資を継続する上での安心材料と言えます。
結論:AIバブルを超えた実需への注目
株価の短期的な急騰には過熱感も指摘されますが、今回のアナリスト評価は「期待」だけでなく、クラウドの受注残やチップの性能といった「実需とインフラ」に基づいている点が特徴です。
Gemini 3.0のリリース観測も高まる中、アルファベットが「広告企業」から「AIインフラのプラットフォーマー」へと市場の認識を転換させられるかどうかが、320ドルというターゲットプライス到達の鍵を握ることになりそうです。
参考・出典
- MarketWatch: Why it’s not too late to buy Alphabet’s stock, according to the newest Google bull (Nov. 18, 2025)
*過去記事 アルファベット GOOGL
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