AIの普及や電力需要の増加を背景に、「次世代原子力」やSMR(小型モジュール炉)への関心が高まっています。特に、オープンAIのサム・アルトマン氏が支援することでも知られるオクロ(OKLO)は、市場の期待を一身に集め、2025年は株価が一時400%も高騰するなど、注目度の高い銘柄です。
そのオクロについて、米投資情報誌バロンズ(Barron’s)が最新の動向を報じました(2025年11月11日付)。
期待と現実のコントラスト
バロンズの記事によると、オクロは事業面で大きな前進を見せています。最大の好材料は、アイダホ国立研究所(INL)に計画中の核燃料製造施設に関して、米エネルギー省(DOE)から核安全設計の承認を得たことです。これは、同社の最初の商業炉「Aurora-INL」実現に向けた重要なマイルストーンといえます。
一方で、投資家が直面している現実は厳しいものです。同時に発表された第3四半期決算では、以下のような数字が示されました。
【バロンズが報じたオクロ第3四半期決算】
- 売上:ゼロ
- 1株あたり損失:20セント(アナリスト予想の13セントを上回る赤字)
- 前年同期:8セントの損失から赤字拡大
- 純損失:2,970万ドル(アナリスト予想の1,820万ドルを上回る赤字)
(出典:Barron’s “Oklo Nuclear Fuel Facility Makes Progress. Earnings Are Still a Challenge.” 2025年11月11日)
壮大なビジョンと財務リスクの綱引き
オクロの現状は、「壮大なビジョン」と「厳しい財務」がせめぎ合っている状態といえます。
アルトマン銘柄としての期待先行
まず認識すべきは、現在の株価が「実績」ではなく「期待」で形成されている点です。売上がゼロの段階でありながら、その技術(小型高速炉や燃料リサイクル)が将来のクリーン電力の中核を担う可能性を秘めています。さらに、サム・アルトマン氏が支援していること自体がブランド価値となり、市場の注目を集めています。
最大のリスクは「時間」
最も懸念されるのは、開発スケジュールの遅れです。バロンズの記事でも触れられているように、オクロが選定されたDOEのパイロットプログラムは「2026年7月まで」に試験炉の稼働を目指しています。しかし、オクロ自身が掲げる商業展開の目標は「2027年から2028年」としています。
この「政府が求めるスピード」と「企業の現実的なスケジュール」のギャップは非常に大きなリスクとなります。もしこの差を埋められない場合、政府の支援縮小や市場の期待の剥落につながる可能性があります。
投資家視点での注目点
オクロは、将来的にAIデータセンターなどへの安定した電力供給源として期待されています。しかし、それはあくまで中長期的な話であり、現時点では売上ゼロの状態が続いています。今回の決算が市場予想を下回ったことで、投資家は「本当に計画通りに商業化できるのか」という不安を感じているはずです。
次回の決算までに、DOE関連の追加承認やプロジェクト進捗を示す成果を出せるかが、オクロの株価を支える鍵となりそうです。
まとめ
オクロは次世代エネルギーの可能性を象徴する企業であり、そのビジョンには大きな魅力があります。一方で、現時点の財務状況や進捗リスクを無視することはできません。投資家にとっては、「夢」と「現実」を冷静に見極める姿勢が求められます。
*過去記事「AI電力銘柄に陰り?ブルーム・エナジーとオクロ株が急落した理由」
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