TSMCの売上成長鈍化?AIブームの「本質」を見極めるべき理由

  • 2025年11月10日
  • 2025年11月10日
  • TSMC

AIブームはピークアウトしたのではないか――。そんな声が、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMC(TSM)が11月10日に発表した10月の月次売上報告を受けて、一部の市場関係者からささやかれています。

確かに、米投資情報誌「バロンズ」が報じたところによると、TSMCの10月の売上(3,674.7億台湾ドル)は過去最高を記録したものの、前年同月比の成長率は17%増と、2024年2月以来の低い伸び率となりました。

しかし、この表面的な数字だけで「AI需要の鈍化」と結論づけるのは早すぎます。

表面的な数字では見えない「AIの中核需要」

注目すべきは、AI需要の「中核」です。

第一に、TSMC自身が2025年通期の売上成長率見通しを、従来の「約30%」から「30%台半ばから40%」の範囲へと上方修正しています。会社側が強気の見通しを維持していることは、投資家にとって重要なシグナルです。

第二に、そして最も重要なのが、AIセクター最大の顧客であるエヌビディア(NVDA)の動向です。

「バロンズ」の記事によれば、エヌビディアのジェンセン・フアンCEOは最近台湾を訪問し、TSMCに対して先端プロセスである3ナノメートルウェハの生産を最大50%増やすよう要請したと報じられています。

この報道が事実であれば、AIサーバー向けGPUの需要は減速するどころか、むしろ供給が追いつかないほど強いことを示しています。

一時的な減速と長期的なトレンドの違い

10月の月次成長率の鈍化は、顧客からの発注タイミングなど一時的な要因による可能性が高いと考えられます。

TSMC自身の強気な通期見通しと、エヌビディアからの強力な追加発注要請という2つの事実を踏まえれば、AIインフラへの投資という大きなトレンドは継続していると判断するのが自然です。

TSMCの株価が年初来で堅調に推移しているのも、市場がこの本質的な流れを評価しているからだと考えられます。

まとめ

AIブームは一時的な熱狂ではなく、今後も半導体業界を牽引する構造的な成長ドライバーであることが明らかになりつつあります。短期的な数字の変動に惑わされず、AI需要の「質」に注目することが、投資判断を誤らないための鍵となります。

参考記事:Barron’s「TSMC Stock Rises. Why Slowing Sales Growth Is No Reason to Panic About AI.」(2025年11月10日付)

*過去記事はこちら TSMC

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