11月6日に開催されたテスラ(TSLA)の株主総会で、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に対する前例のない報酬プランが承認されました。このパッケージは、業績条件をすべて達成した場合、最大で1兆ドル(約150兆円)に達する可能性があります。投票の結果、賛成票は75%を超えたと発表されました。発表直後の株価は時間外取引で一時1.7%上昇しましたが、その後はおおむね横ばいで推移しています。
マスク氏が語った「AIとロボットによる持続的な豊かさ」
総会の壇上に立ったマスク氏は、まず株主への感謝を述べた後、テスラの将来ビジョンを語りました。中心となったのは人工知能(AI)とロボティクスです。
マスク氏は、テスラが開発を進める人型ロボット「オプティマス」について、AIによって労働力が無限に拡張されると主張しました。労働と資本の制約が解消されれば、経済生産が飛躍的に拡大し、「AIとロボットによる持続的な豊かさ」が実現すると述べています。
また、自動運転技術についても「数カ月以内にフルセルフドライビング(FSD)機能を使ってテキスト送信が可能になる」とし、2026年4月にはロボタクシー専用車「サイバーキャブ」の生産を開始する計画を明らかにしました。自動運転によって「数百万の命が救われる」とも語っています。
投資家がマスク氏に託す「具現化AI」時代のリーダーシップ
今回の報酬プラン承認の背景には、AI技術が自動車やロボットといった「具現化AI(embodied AI)」に進化しつつあるという投資家の期待があります。テスラは電気自動車メーカーであると同時に、AIプラットフォーム企業としての側面を強めており、株主はその変革をマスク氏のリーダーシップのもとで進めたいと考えています。
報酬パッケージには、今後10年間で「100万体の人型ロボット」と「100万台のロボタクシー」を実現するという業績条件が組み込まれています。テスラにとって、これは単なる報酬ではなく、AI主導の次世代産業構造を築くための「挑戦目標」といえます。
インテルとの協業示唆で株価が反応
マスク氏は総会の中で、AIコンピューティングやロボティクスに必要な半導体を製造するため、インテル(INTC)と協議する可能性を示唆しました。さらに、自社で半導体製造工場(ファブ)を建設する構想にも触れました。この発言を受けて、インテルの株価は時間外取引で2.5%上昇しました。
AIチップ分野ではエヌビディア(NVDA)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)との競争も激化しています。マスク氏の発言は、テスラがハードウェア面でも独自のAI戦略を進める意図を示すものと受け止められています。
まとめ:AIとロボットが牽引するテスラの次の10年
今回の株主総会で明らかになったのは、テスラが電気自動車の枠を超え、AIとロボティクスの融合によって新しい産業の主導者を目指しているということです。マスク氏が掲げる「持続的な豊かさ」という理念は理想主義的にも見えますが、その背後にはAI時代を象徴する明確な成長戦略があります。
テスラの株価は短期的には不安定な動きを見せていますが、AIロボティクス事業が現実化すれば、企業価値が再評価される可能性も高まっています。今回の「1兆ドル報酬パッケージ」は、その未来への賭けともいえるのです。
*過去記事はこちら テスラ TSLA
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