量子コンピューティング関連株に再び波乱が訪れています。カナダの量子コンピュータ企業ディーウェーブ・クオンタム(QBTS)の株価が第3四半期決算発表後に急落しました。同業のイオンキュー(IONQ)やクアンティニュームもそれぞれ動きを見せており、量子業界全体の成長と課題が浮き彫りになっています。
売上は倍増も、損失拡大が市場心理を冷やす
ディーウェーブ・クオンタムの第3四半期売上は前年同期比で100%増の370万ドルとなり、前四半期(310万ドル)を上回りました。ブッキング(将来の売上計上予定)も240万ドルと前期比80%増加し、CEOのアラン・バラッツ氏は商用顧客の拡大を強調しました。
しかし、純損失は1億4,000万ドルに拡大しました。前年同期の損失2,270万ドルから大きく悪化しており、その主因はワラント(新株予約権)に関連する1億2,000万ドル超の非現金費用でした。このニュースを受けて、同社株は一時上昇後に急落し、8.5%安の28.39ドルで11月6日の取引を終えました。
豊富な現金残高と将来への自信
同社は四半期中にワラント行使によって3,990万ドルの資金を調達し、さらに四半期終了後にも2,130万ドルを追加で獲得しました。現金残高は過去最高の8億3,620万ドルに達しています。
バラッツCEOは「世界が量子コンピューティング、特にディーウェーブに注目している。商用・政府・研究分野で量子の価値を実現していく」とコメントしています。
イオンキューは売上急増、通期見通しを再上方修正
一方、アメリカのイオンキューは第3四半期に前年同期比222%増の3,990万ドルの売上を計上しました。自社ガイダンス上限を37%上回る結果で、市場予想(ファクトセット調べの1億160万ドル)を上回る強い見通しを発表しました。通期売上ガイダンスを1億600万~1億1,000万ドルに引き上げたことも好感されています。6日の終値は3.7%高の57.43ドルでした。
ただし、損失は拡大しており、第3四半期の赤字は11億ドルに達しました。前年同期(5,250万ドル)や前四半期(1億7,750万ドル)から大幅に膨らみましたが、投資家は成長余地に注目しています。
クアンティニュームは次世代量子コンピュータ「Helios」を発表
英系量子企業クアンティニュームは、次世代量子コンピュータ「Helios」を発表しました。同社は2026年にシンガポールへ初号機を納入する予定で、政府との戦略的パートナーシップを通じて量子コンピューティングの導入を促進する計画です。
クアンティニュームはハネウェルが過半数を保有する非上場企業ですが、2026年末から2027年にかけて上場を予定していると伝えられています。
量子株は依然としてハイリスク・ハイリターンの領域
量子コンピューティング市場は技術的・商業的に発展途上であり、収益化にはまだ時間がかかります。ディーウェーブの株価は今回の下落後も年初来で238%高と、イオンキュー(+37%)やリゲッティ・コンピューティング(RGTI、+125%)を上回る上昇率を維持しています。
投資家の関心は依然として高く、量子計算がクラウドやAI分野とどのように結びついていくのかが今後の焦点となりそうです。
このように、量子関連株は急速な成長と不安定さが共存しています。短期的には株価の変動が大きくなる可能性がありますが、長期的な技術革新への期待も根強く、今後の展開が注目されます。
*過去記事「量子コンピューター銘柄が急騰!米政府が出資検討、トランプ政権の新戦略とは」
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