2025年11月5日、米半導体大手クアルコム(QCOM)の株価は、堅調な決算内容にもかかわらず時間外取引で2.2%下落しました。売上と利益は市場予想を上回ったものの、一部事業での成長鈍化や費用増加が投資家心理を冷やす結果となりました。
売上・利益ともに市場予想を上回る堅調な決算
クアルコムの2025年度第4四半期の調整後1株当たり利益は3.00ドルで、市場予想の2.87ドルを上回りました。売上も112億7,000万ドルと、予想の107億7,000万ドルを上回る結果でした。主力のチップ事業が好調で、売上は98億ドルと前年同期比13%増加しています。特にスマートフォン向けを中心とする高性能チップが堅調で、アップル(AAPL)向けの減少を除けば18%の増収となりました。
スマートフォン市場の減速下でも高価格帯で優位性を維持
世界的にAndroidスマートフォンの販売が伸び悩む中でも、クアルコムは高価格帯市場で支配的な地位を保っています。同社の通信チップは性能面で競合他社を上回っており、スマートフォンメーカーから1台ごとのロイヤリティを徴収するライセンス収入モデルが収益を支えています。ライセンス収入自体は減少しましたが、予想ほどの落ち込みではありませんでした。
アップルとの関係と自社チップ開発の進展
クアルコムとアップルの関係は長年緊張状態にありました。2019年に独占禁止法訴訟を和解したものの、アップルは自社製の5Gチップ開発を進めてきました。2025年にはiPad Proや一部の低出荷台数iPhoneでクアルコム製チップを置き換え始めています。しかし、ミリ波(millimeter-wave)対応などの技術的課題は依然として残っており、クアルコムの優位性はすぐには失われない見通しです。
AI分野への挑戦とエヌビディアとの競争
クアルコムは新たにAIアクセラレーターとサーバー向けチップ市場への参入を発表しました。これらの製品は2027年以降に本格的な収益貢献を見込んでいます。ただし、業界標準となっているエヌビディア製品の壁は厚く、採用企業をどこまで拡大できるかが焦点です。特にアマゾン・ドット・コム(AMZN)のAWS、マイクロソフト(MSFT)のAzure、アルファベット(GOOGL)のGoogle Cloudといった大手クラウド事業者は、自社開発チップの導入を進めており、競争環境は一段と厳しくなっています。
まとめ
クアルコムの決算は好調でしたが、費用の増加や自動車向けチップの見通し鈍化が株価の重荷となりました。一方で、AIや高性能通信分野への戦略的シフトは中長期的な成長の鍵となります。短期的な株価変動はあっても、同社の技術力と市場支配力は引き続き注目すべきポイントといえます。
*過去記事「クアルコム株が急騰!AIサーバー参入でエヌビディアとAMDに挑戦」
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