2025年の米国株市場は、AI関連の期待や製造業回帰、旺盛な消費などを背景に、主要指数が大きく上昇しています。S&P500指数は年初来で約16%上昇し、複数回の史上最高値を更新しています。しかし、一部の投資家にとっては「利益確定」のタイミングでもあります。
そんな中、ウルフ・リサーチのチーフ投資ストラテジスト、クリス・セニェック氏が、近い将来株価が下落する可能性がある銘柄として6社を挙げています。
市場の熱狂の裏に潜むリスク
現在の株式市場を支える要因には、AIブームやデータセンター建設の急増、米国内製造業の活性化、堅調な個人消費、そして利下げ期待があります。しかしリスクも存在します。
9月のインフレ率は3%と予想を下回ったものの、依然としてFRB目標の2%を上回っています。加えて、関税政策は物価上昇を助長しており、今後の利下げペースを抑える可能性があります。
さらに、ビッグテック企業がデータセンター投資を抑制すれば、関連企業の売上にも影響が及ぶ恐れがあります。
セニェック氏の「売り推奨」スクリーニングの特徴
セニェック氏が注目するのは、最近CFO(最高財務責任者)が退任した企業です。CFO交代は戦略的変化を意味する場合が多く、収益が期待通りにならないリスクを伴います。
また、これらの銘柄の多くは過去1年で急騰しており、今後わずかな決算の失望が株価急落につながる可能性もあります。
ボーイング(BA)
航空機大手ボーイングは依然として経営リスクを抱えています。CFOの退任に加え、生産品質問題や納入遅延が続いており、投資家の信頼回復には時間がかかりそうです。株価は今年上昇しているものの、根本的な改善が見えない点から、短期的には利益確定の好機といえます。
ドアダッシュ(DASH)
フードデリバリー大手ドアダッシュもリスクが高まっています。パンデミック後の成長鈍化に加え、コスト増や競争激化が収益を圧迫しています。CFO交代による経営方針の変化が、今後の業績に不確実性をもたらすと見られています。
スノーフレーク(SNOW)
クラウドデータソフトウェア企業スノーフレークは、AI需要の恩恵を受ける一方で、依然として利益を出していません。投資家の期待が先行しており、わずかな成長鈍化でも株価が反応しやすい状況です。CFO交代による経営不安も重なっています。
ルメンタム・ホールディングス(LITE)
データセンター向けネットワーク製品を提供するルメンタムも対象銘柄の一つです。AI関連需要で恩恵を受けていますが、需要の一巡や投資抑制の影響を受けやすい構造にあります。現金流出が続く中でのCFO退任は警戒材料です。
エアロバイロンメント(AVAV)
無人航空機メーカーのエアロバイロンメントは、防衛関連需要で成長を遂げていますが、利益率の改善には課題が残ります。CFO交代により短期的な業績変動のリスクが高まっています。
ブルーム・エナジー(BE)
燃料電池メーカーのブルーム・エナジーは、化学反応を利用して電力を生み出す技術で注目を集めています。AI向けデータセンター向け電力需要の高まりを背景に、株価は過去1年で約10倍に急騰しました。
しかし、CFOダニエル・ベレンバウム氏が2025年4月に突然辞任し、前年には前任のCFOグレゴリー・キャメロン氏も退任していました。経営体制の不安定さが懸念されています。
アナリスト予測では、ブルーム・エナジーは今年177億ドルの売上に対して3,400万ドルの現金を消費する見込みです。2026年には売上が219億ドルへ拡大する一方で、設備投資は倍増の1億400万ドルに達すると予想されています。フリーキャッシュフローの黒字化が実現できるかは依然として不透明です。
投資家への示唆
市場の熱狂の中で、これらの銘柄を「利益確定」や「売却候補」として検討するのは合理的な判断といえます。CFO退任が相次ぐ企業や、急騰後に資金流出を続ける企業は、今後の決算で失望を招くリスクが高いからです。
特にブルーム・エナジーのようにすでに大幅な上昇を遂げた銘柄は、下落リスクを意識するタイミングに来ています。
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