米メディアのマーケットウォッチが10月23日に公開した記事では、ウォール街が注目するAIブームの本質を「電力インフラの不足」として分析しています。記事の筆者チャーリー・ガルシア氏は、AIの真のボトルネックは半導体ではなく、老朽化した電力網そのものだと指摘しています。
米国の電力インフラは限界に
アメリカ土木学会によると、米国の電力網の評価は「D+」と非常に低い水準にあります。AI開発を支えるデータセンターの需要は急増していますが、電力供給網がそれに追いつかず、停電リスクが高まっているとのことです。
一方、中国は電力供給能力で大きく先行しており、超高圧送電線の整備でも圧倒的な差があります。ガルシア氏は「アメリカが会議で議論している間に、中国は実際に発電所を建てている」と皮肉を交えて指摘しています。
920億ドルの「電力インフラ危機」対応
2025年7月、米政府の「AIアクションプラン」がエネルギーインフラをAI発展の最大の制約要因と認定しました。これを受けて民間企業が動き出し、ペンシルベニア州だけで約920億ドルの投資が発表されています。
主な企業の動きは以下の通りです。
- ファーストエナジー(FE):電力網の近代化に150億ドルを投資
- 日立(6501/HTHIY):米国内に変圧器製造拠点を建設
- ブラックストーン(BX):データセンターおよびインフラに250億ドルを投入
- アルファベット(GOOG/GOOGL):水力発電所の改修を含め280億ドル規模の投資を発表
テクノロジー企業が自前で発電所を建設するほど、電力不足が深刻化している状況を示しています。
「電力で稼ぐ」11銘柄
記事では、AI時代に利益を得る可能性が高い11社を挙げています。いずれも送電、変圧、電力管理など、電気そのものを支える企業群です。
- グローバル設備メーカー:日立(6501)、ABB(ABBN/ABBNY)、シュナイダーエレクトリック(SU/SBGSY)
- ケーブル関連:プライスミアン(PRY/PRYMY)、ネクサンス(NEX/NEXNY)
- 米国インフラ施工企業:クアンタ・サービシズ(PWR)、MYRグループ(MYRG)、マステック(MTZ)
- 電力設備・管理:GEベルノバ(GEV)、イートン(ETN)、アイトロン(ITRI)
これらの企業はAIデータセンターの拡大に不可欠な「電力を届ける仕組み」を担っています。
世界規模で進む電力網投資
ブルームバーグNEFの試算では、世界の送電・配電網への投資額は2050年までに総額15.8兆ドルに達する見通しです。これは国家予算にも匹敵する規模であり、電力インフラ分野がAI産業の次なる主戦場になることを示しています。
インフラこそがAI時代の基盤
AIモデルの開発やデータセンター運営は膨大な電力を必要とします。記事では、米国がインフラ整備を怠ってきた70年の代償を支払う時期に来ていると警告しています。電力網を整備できなければ、AI競争でも中国に後れを取ることになるという厳しい現実を浮き彫りにしています。
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