医療ロボット大手のインテュイティブ・サージカル(ISRG)の株価が、第3四半期の決算発表後に急騰しました。新型手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ5」の販売が予想を上回る勢いで進んでおり、投資家の懸念を払拭する内容となりました。
予想を大きく上回る決算内容
同社が10月21日に発表した第3四半期の調整後1株利益は2.40ドルとなり、アナリスト予想の1.99ドルを大きく上回りました。売上も25億1000万ドルで、予想の24億1000万ドルを超えました。これを受けて株価は時間外取引で急上昇し、翌日22日の米国市場で13.4%高となりました(米国東部夏時間13:40現在)。
この好決算により、2025年に入って続いていた株価の低迷ムードが一変しました。特に新型ロボット「ダ・ヴィンチ5」の販売が業績をけん引し、同社の成長ストーリーが再び注目を集めています。
ダ・ヴィンチ5の設置台数が急増
2025年第3四半期に設置された「ダ・ヴィンチ」シリーズの手術システムは427台で、前年同期の379台を上回りました。そのうち240台が最新モデル「ダ・ヴィンチ5」で、前年同期の110台から倍増しました。手術件数も前年同期比で約20%増加し、アナリスト予想の15.7%を上回る伸びを記録しました。
インテュイティブ・サージカルは通期の「ダ・ヴィンチ」手術件数の成長率見通しを、従来の15.5~17%から17~17.5%へと上方修正しました。2024年の成長率(17%)を上回るペースが見込まれています。
アナリストは長期成長を評価
リリンク・パートナーズのアナリスト、マイク・クラトキー氏は「ダ・ヴィンチ5による外科医の自律性の向上が、夜間や週末の手術拡大につながる可能性がある」と指摘しています。また、水準を維持してきた手術件数の成長が、長期的な収益拡大の基盤になると評価しました。
一方、米国みずほ証券は「ダ・ヴィンチ5の米国での需要が日本、中国、英国の軟調を補った」とし、同社が引き続き「医療テクノロジー分野の成長をけん引する企業」であるとコメントしました。米国みずほは目標株価を520ドルから575ドルに引き上げ、格付けは中立を維持しています。
市場飽和への懸念も残るが優位性は継続
市場では、米国内での手術支援ロボット市場が飽和しつつあるとの見方も出ています。再生部品を販売するリストア・ロボティクスなど新興企業が台頭しており、競争環境の変化にも注目が集まります。しかし、同社は20年以上にわたり業界をリードしており、その技術的優位性は依然として揺るぎません。
トゥルイスト証券は「インテュイティブ・サージカルは今後も革新を続けることで、未開拓の手術分野で成長を維持できる」とし、目標株価を525ドルから620ドルに引き上げ、「買い」評価を継続しました。
今後の見通し
関税の影響については、同社の最高財務責任者が「2026年にかけて影響が高まる可能性がある」と述べていますが、短期的な懸念にとどまるとの見方が多いです。アナリストの多くは、同社が長期的な成長軌道を維持するとみており、「ダ・ヴィンチ5」を中心とした手術支援市場でのシェア拡大が続くと予想しています。
この決算は、医療ロボット分野におけるインテュイティブ・サージカルの圧倒的な地位を再確認させる内容となりました。手術件数の増加と新型システムの普及が進む中、同社の長期成長への期待が再び高まっています。
*過去記事「インテュイティブ・サージカル株が急落、ドイツ銀行がウォール街で初めてとなる「売り」評価」
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