バロンズのニュースレター「Tech」(2025年10月15日号)は、マイクロソフト(MSFT)のクラウド&AI部門を率いるスコット・ガスリー氏へのインタビューを掲載しました。記事では、オープンAIとの関係、AI需要の拡大、そして半導体戦略に至るまで、マイクロソフトのAI戦略の全貌が語られています。
AIは「産業革命級」の変化をもたらす
ガスリー氏は、現在進行中のAIシフトを「産業革命に匹敵する」と表現しています。鉄道や通信が世界をつないだように、AIも企業活動の根本を変えると指摘しました。従来の「質問と回答」型から、タスクを任せて結果を受け取る「エージェント型ワークフロー」へと進化することで、企業の生産性と意思決定の在り方が大きく変わるとしています。
企業が実感するAIの投資効果
マイクロソフトの顧客企業では、AIの導入が具体的な効果を上げ始めています。特にGitHub Copilotなどの開発支援ツールによる開発効率の向上、医療現場での診療記録作成の自動化、コールセンターの応答支援などが代表例です。ガスリー氏は「月20ドルの投資で40%の生産性向上が得られる」と強調し、AIの費用対効果を強く訴えました。
オープンAIとの関係とクラウド戦略のバランス
マイクロソフトはオープンAIの初期からの主要パートナーであり、Azure上で大規模なAI処理基盤を提供しています。一方で、オープンAIがオラクル(ORCL)やコアウィーブ(CRWV)と契約を結ぶ動きについては、「私たちはすべての案件に参加するわけではない」とし、ROI(投資収益率)の高いプロジェクトに集中する方針を示しました。ガスリー氏は、地域ごとの最適なキャパシティバランスを取りながら「供給制約の中で賢く投資する」と述べています。
AIチップは「2社+自社」戦略
AIチップについては、CPUと同様の「2社+1社」戦略を採用していると説明しました。具体的には、エヌビディア(NVDA)とAMD(AMD)のGPUを採用しつつ、自社開発のAIプロセッサ「Maia」を導入することで、コスト効率と供給安定性を確保する方針です。この構造により、外部パートナー間の競争を促し、価格と技術の両面で優位性を保つ狙いがあります。
モデル開発も「外部+自社」の両輪
マイクロソフトはオープンAIとの連携を軸にしながらも、アンソロピックなど他社モデルの採用を進め、さらに自社独自のAIモデル開発にも注力しています。ガスリー氏は「顧客の選択肢を最大化することが最重要」と強調し、特定のモデルに依存しない柔軟なエコシステム構築を目指していると述べました。
今後の展望
AIの進化とともに、マイクロソフトのクラウド基盤は引き続き拡大が予想されます。Azureの売上は前年同期比39%増と、アマゾンのAWSを上回る成長を記録。オープンAIとの協業に加え、独自チップと自社モデルの開発が進むことで、AIインフラ市場での主導権争いはさらに激しさを増しそうです。
このように、バロンズの記事ではマイクロソフトのAI戦略が「外部との協業」と「自社開発」を両立させる多層的な構造を持つことが浮き彫りになっています。AI時代の勝者を決めるのは、単なる技術力だけでなく、柔軟で戦略的なパートナーシップ構築力にあるといえます。
*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT
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