オランダの半導体製造装置メーカーASML(ASML)が10月15日に発表した2025年第3四半期決算は、利益面で市場予想を上回ったものの、売上はやや下回る結果となりました。1株あたり利益は5.49ユーロで、アナリスト予想の5.45ユーロを上回りましたが、売上は75億ユーロと予想の77億ユーロに届きませんでした。
それでも市場の注目は、AI向け半導体需要の拡大を背景にした同社の強気な見通しに集まっています。ASMLは2025年の売上成長見通しを再確認し、2026年も現状より売上が減少することはないとしています。
受注が倍増、AI向け設備投資が支え
ASMLの四半期受注額は54億ユーロと、前年同期の26億ユーロから倍増しました。これはAIデータセンターで使用される高性能チップの製造装置需要が引き続き高まっていることを反映しています。第4四半期の売上は92億~98億ユーロの範囲になると予想されています。
ASMLはEUV(極端紫外線)露光装置で事実上の独占的地位を持ち、AIチップの微細化に不可欠な存在です。CEOのクリストフ・フーケ氏も「AI投資の勢いが顧客層全体に広がっている」とコメントしています。
株価は堅調、2026年以降の成長に注目
ASMLのADR(米国預託証券)は9月初めから約30%上昇しており、市場の期待感が高まっています。もっとも、アナリストの見方は分かれています。ジェフリーズ証券のアナリストは「利益と見通しは強弱両面を含む内容だが、2026年の成長確信が薄い」として、ホールド(中立)評価を維持しています。一方、JPモルガンはAI向け次世代装置「High NA EUV」への関心拡大を理由に、オーバーウエイト評価と1175ドルの目標株価を提示しています。
サムスンとインテルの慎重姿勢、TSMCが鍵に
ASMLにとって課題となっているのは、主要顧客であるサムスン電子やインテル(INTC)が先端EUV装置への投資を一時的に抑制している点です。そのため、現在は台湾積体電路製造(TSMC)による次世代装置の採用が大きな焦点となっています。JPモルガンは「High NA EUVの量産導入は2027年後半から2028年前半になる可能性が高い」と見ています。
AI時代の中核企業としての地位は不変
短期的には売上の伸び悩みが見られるものの、ASMLは依然としてAI半導体供給網の中核に位置しています。AI向け高性能チップの製造を支える装置を提供する企業として、その長期的な成長ストーリーは維持されています。市場では「ASMLはAIインフラ時代の必需企業」という見方が引き続き支配的です。
*過去記事「AIブームで取り残されたASML、その理由と復活の鍵とは?」
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