S&P500が危険水域?インデックス投資に潜む集中リスク

  • 2025年10月12日
  • 2025年10月12日
  • BS余話

マーケットウォッチが報じた最新の分析によると、現在のS&P500は2000年のインターネットバブル期と同程度、あるいはそれ以上のリスクを抱えている可能性があります。インデックス全体の上昇が、わずか10銘柄に極端に偏っている点が懸念されています。

S&P500は通常、米国の大型株500社に分散投資することで安定的なリターンを狙う指数として知られています。しかし、現在はその「分散効果」が薄れつつあると指摘されています。特にエヌビディア(NVDA)、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL、GOOG)といったメガキャップ企業の存在感が、指数全体を大きく左右しています。


わずか10社でS&P500の40%を占める構造

ネッド・デイビス・リサーチのデータによると、2025年9月時点でS&P500の上位10社(実際にはアルファベットの2種類の株式を含め11銘柄)が、時価総額全体の約40.3%を占めています。これは過去53年間で最も高い集中度です。

S&P500は時価総額加重平均で構成されているため、エヌビディアのような高成長企業の株価が急騰すれば、その影響が指数全体に強く現れます。記事によれば、これら上位企業の2年間の売上成長率(CAGR)は、インデックス全体の3.7%を大きく上回る水準でした。


PER(株価収益率)の高さにも注意が必要

もう一つのリスクは「高バリュエーション」です。S&P500全体の予想PERは23倍に達しており、これは2021年以来の高水準です。比較として、ドットコムバブル直前の2000年3月のピーク時は26.2倍でした。現在の水準は、過去20年間で最も割高な水準に近づいています。

特にテスラ(TSLA)の予想PERは185倍と突出しており、AIや自動運転といった将来期待が過度に株価に織り込まれている可能性もあります。


「高PER+高集中」の組み合わせが危険信号に

2000年のITバブル崩壊時、S&P500はピークから約49%下落しました。その際の上位10社の時価総額比率は29.2%でした。つまり、現在の40%超という集中度は、バブル崩壊時よりもリスクが高い構造だといえます。

マーケットウォッチは、「AI関連の設備投資ブームに対する期待が過剰で、実際の利益成長が追いつかない場合、S&P500の下落リスクは想定以上になる」と警告しています。


投資家が取るべき対策:分散とバランスの再構築

記事では、S&P500インデックスファンドの保有比率を見直し、分散を強化することが推奨されています。たとえば、以下のような手法が紹介されています。

  • S&P500の「等加重型(Equal Weight)」ETFに一部をシフト
  • バリュー株・配当株・モメンタム株などの要因(ファクター)を加味したETFを組み合わせる
  • 債券や米国以外の海外株式などを加えた「60/40ポートフォリオ」への移行

実際、過去のデータでは、S&P500が割高だった局面では60/40のバランス型ポートフォリオが10年単位で優位に立つケースが多かったと指摘されています。


長期投資家に求められる冷静な視点

S&P500の長期的な実績は非常に強力であり、長期保有によるリターンは依然として魅力的です。しかし、短期的には指数の過度な集中と高バリュエーションにより、価格変動リスクが増している点を意識する必要があります。

今後のAI関連投資ブームが実際の利益成長に結びつくかどうかが、S&P500の持続的な上昇を左右する重要なポイントになると考えられます。


この記事は、マーケットウォッチ(MarketWatch)のPhilip van Doorn氏による記事「Why your S&P 500 index fund might be more risky than the internet bubble」(2025年10月11日更新)を参考に構成しました。原文はMarketWatch公式サイトで閲覧できます。

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