配当金投資家にはおなじみの「配当貴族(Dividend Aristocrats)」ですが、バロンズの記事によると、今注目すべきは「バイバック・アリストクラッツ(Buyback Aristocrats)」だといいます。
配当貴族は25年以上連続で増配を続ける企業群で、代表例としてウォルマート(WMT)、コカ・コーラ(KO)、エクソンモービル(XOM)などが挙げられます。安定したキャッシュフローと経営品質の高さで知られ、S&P500銘柄の中でも信頼性の高い存在です。
一方で、株主還元は配当だけではありません。企業が自社株を買い戻す「株式買戻し(Buyback)」も、投資家にとって重要なリターン源です。
ゴールドマン・サックスの定義と現状
ゴールドマン・サックスのベン・スナイダー氏によると、2025年前半、S&P500企業による自社株買いは過去最高水準に達しましたが、「ネット・バイバック利回り」は過去20年で最低レベルまで低下したといいます。これは、新株発行などにより、買戻し効果が相殺されているためです。
同社は「過去10年のうち9年で毎年1%以上の発行済株式数を減らした企業」をバイバック・アリストクラッツと定義。その結果、ビザ(V)、アップル(AAPL)、アメリカン・エキスプレス(AXP)など54銘柄が該当しました。これらの企業の平均PERは17倍と割安で、配当と買戻しを合わせた「総株主利回り」は4%超に達します。
バイバック・アリストクラッツ上位12銘柄
このうち、ウォール街アナリストの「買い推奨」比率が特に高い12銘柄を、バロンズの記事は紹介しています。
- アシュラント(AIZ)
- グローブ・ライフ(GL)
- メットライフ(MET)
- TJXカンパニーズ(TJX)
- オートゾーン(AZO)
- オライリー・オートモーティブ(ORLY)
- ビザ(V)
- マッケソン(MCK)
- シチズンズ・フィナンシャル・グループ(CFG)
- バンク・オブ・アメリカ(BAC)
- ジャビル(JBL)
- ラルフローレン(RL)
これら12社の平均「買い推奨」比率は81%に達し、S&P500平均の55%を大きく上回ります。過去12か月間の平均リターンは約36%、平均PERは18倍、配当利回りは1.4%です。
つまり、これらの企業は株価上昇と適度なインカムリターンを両立しており、配当だけに頼らない株主還元モデルの成功例といえます。
配当株との比較と投資戦略
配当貴族が「安定した増配」を武器にする一方で、バイバック・アリストクラッツは「柔軟な資本政策」で魅力を放っています。ただし、自社株買いは任意であり、景気後退時には縮小されるリスクがあります。また、高値圏での買戻しは株主価値を毀損する恐れもあります。
それでも、記事は「買い戻しによって着実に発行株数を減らしてきた企業こそ、長期的な株主還元の本命」と指摘しています。バイバック・アリストクラッツは、インカムとキャピタルゲインの両方を狙える存在として注目に値します。
まとめ
バロンズの記事は、投資家が「配当だけでなく、自社株買いの質」にも目を向けるべきだと提言しています。
ウォール街のアナリストに高く評価され、実際に市場でも好パフォーマンスを続けている「バイバック・アリストクラッツ」は、2025年の米国株投資において有力な選択肢の一つになりそうです。
*過去記事はこちら 配当株
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