オラクルのAIクラウド事業に潜む「利益なき成長」の現実

  • 2025年10月8日
  • 2025年10月8日
  • BS余話

2025年、オラクル(ORCL)は生成AI時代の主役企業のひとつとして脚光を浴びています。特にエヌビディア(NVDA)のGPUを搭載したクラウドサーバーをオープンAIなどのAI企業に貸し出すビジネスで、大きな成長を遂げてきました。しかし、「The Information」が10月7日に報じた内部資料によれば、その収益性には深刻な課題が潜んでいるようです。

サーバーレンタルの利益率はわずか14%

報道によると、オラクルは2025年8月までの3カ月間で、GPU搭載サーバーのレンタル事業から約9億ドルの売上を上げた一方、粗利益は1.25億ドルにとどまりました。これは売上1ドルあたり約14セントという、非テック業種と比べても低い水準です。

利益率がここまで低下する背景には、GPUの電力コストやデータセンター運用費用、そして設備の減価償却費が影響しています。さらに、オラクルは多くのデータセンターを他社からリースしているため、自社保有が中心のAWSやGoogle Cloudと比べてコスト構造に不利な面もあるようです。

ブラックウェルGPUの導入で100億円の損失も

「The Information」の報道によると、2025年から導入が始まったエヌビディアの最新GPU「Blackwell(ブラックウェル)」に関して、オラクルはこの新型GPUを活用したサーバーレンタルにおいて、約1億ドル近い損失を出したとされています。

これは、データセンターを整備しても顧客がすぐには利用を始めず、稼働率が低下する「立ち上げ期間」が存在するためです。稼働率はチップの種類によって60~90%と幅がありますが、新型チップほど初期投資の負担が大きく、利益を圧迫する構造になっています。

利益率を犠牲にしてでも成長を優先

オラクルの幹部は、「利益率が下がっても、売上とキャッシュフローの成長が見込める契約を優先する」と説明しています。実際に、GPUサーバーの売上比率は2025年5月期に約20%だったのが、直近四半期では27%に上昇しています。

また、AI関連顧客との契約には、リスト価格からの大幅なディスカウントが含まれていることも多く、収益性をさらに下げる要因となっています。

顧客集中のリスクも顕在化

もうひとつの重要なリスクは、売上の大半が少数の顧客に依存していることです。オープンAI、メタ(META)、バイトダンス、xAI、そしてエヌビディア自身が、オラクルのAIクラウド売上の約8割を占めているとされています。特に直近3カ月間で契約した3170億ドル相当のクラウド契約は、ほぼすべてがオープンAIによるものでした。

古いGPUが収益を支える皮肉な構造

一方で、2020年に登場した「Ampere(アンペア)」世代の旧型GPUによる収益性は比較的高く、利益率を支える存在となっているようです。これは、最新チップの登場で旧型チップの需要が急激に消えるというエヌビディアの予想とは異なる動きです。

まとめ:成長と収益のトレードオフ

「The Information」の報道は、オラクルのAIクラウド戦略が外から見れば華々しく見える一方で、収益構造には大きなひずみが生じている現実を浮き彫りにしました。高コストなGPU投資、価格競争、顧客集中といった課題を抱えながらも、将来的なフリーキャッシュフローと市場シェア拡大を見据えて突き進むオラクル。その動向は、AIインフラ競争の未来を占う上で重要な示唆を与えてくれます。

*過去記事「AIブームに陰り?オラクル社債が映すウォール街の不安

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