長期的なインカム投資戦略において、「配当利回りの高さ」よりも「配当の成長率」に注目するアプローチが注目を集めています。今回は、投資情報メディアのマーケットウォッチが10月2日付けの記事で紹介した「過去5年間でS&P500を上回るリターンを記録し、かつ配当を最も成長させた10銘柄」をご紹介します。
高利回りよりも「成長する配当」が資産形成に有効
多くの投資家は、今すぐ得られる配当利回りの高さに目を奪われがちです。しかし、株価が下落し、減配のリスクが高まる「バリュートラップ」に陥るケースもあります。
一方で、比較的控えめな利回りであっても、安定したキャッシュフローに支えられた企業の配当は、毎年の増配によって長期的なインカムの複利効果を生み出します。
たとえば、ある銘柄を5年前に購入した投資家が、当時の購入価格に対して現在の配当で計算した「実効利回り」が8%を超えていたという例もあります。
過去5年で最も配当成長率が高かったS&P500構成銘柄トップ10
マーケットウォッチの記事では、S&P500構成銘柄のうち、5年前に配当利回りが1.5%以上だった247銘柄を対象に、現在の配当水準との比較から「5年複利成長率(CAGR)」を算出。配当の増加率が最も高かった企業をランキング形式で紹介しています。
以下は、そのトップ10の企業とその主要指標の要約です:
企業名 | ティッカー | 配当CAGR | 5年前購入時の実効利回り | 現在の利回り | 株価5年騰落率 | トータルリターン |
---|---|---|---|---|---|---|
タルガ・リソーシズ | TRGP | +58.5% | 28.5% | 2.39% | +1,094% | +1,219% |
ウェルズ・ファーゴ | WFC | +35.1% | 7.66% | 2.15% | +257% | +300% |
ゴールドマン・サックス | GS | +26.2% | 7.96% | 2.01% | +296% | +346% |
モルガン・スタンレー | MS | +23.4% | 8.27% | 2.52% | +229% | +286% |
ウィリアムズ・ソノマ | WSM | +22.4% | 5.84% | 1.35% | +332% | +377% |
EOGリソーシズ | EOG | +22.2% | 11.35% | 3.64% | +212% | +298% |
ダイヤモンドバック・エナジー | FANG | +21.7% | 13.28% | 2.80% | +375% | +490% |
ダーデン・レストランツ | DRI | +20.5% | 5.96% | 3.15% | +89% | +120% |
キムコ・リアルティ | KIM | +20.1% | 8.88% | 4.58% | +94% | +140% |
シュルンベルジェ | SLB | +17.9% | 7.33% | 3.32% | +121% | +146% |
※配当CAGRは2020年9月末比。リターンは配当再投資ベース。
注目すべき点と投資判断のヒント
上記の表からもわかるように、配当の成長が株価上昇と相まって非常に高いトータルリターンを生んでいます。とくにエネルギー関連企業や金融株、資産運用部門を強化してきた企業が上位に並んでいる点が特徴的です。
たとえばモルガン・スタンレーは、5年前に比べて配当が約3倍になっており、資産運用部門の拡大が収益の安定性を高めています。
一方で、現在の利回りは控えめに見えるかもしれませんが、保有期間とともに利回りが積み上がっていくことが重要な視点となります。
今後のリサーチに役立てるために
本記事で紹介された10銘柄は、配当成長という観点から長期保有に値する可能性のある銘柄群といえます。
投資判断においては、単なる利回りの数字だけでなく、その背後にあるビジネスモデル・財務の安定性・配当方針の一貫性をしっかり確認することが求められます。気になる銘柄があれば、決算資料(10-Q/10-K)などの一次情報にもアクセスしてみることをおすすめします。
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