2025年9月、オープンAIは「ChatGPT Pulse」という新機能を導入し、検索業界に衝撃を与えました。この機能は、ユーザーの個人情報や連携アプリ(GmailやGoogleカレンダーなど)から取得したデータを活用して、パーソナライズされた情報を毎朝自動で提供するというものです。
一部のProユーザーに先行提供されており、今後は一般ユーザーにも段階的に展開される予定とされています。
Pulseは「検索を使わない検索体験」を実現
Pulseはユーザーが検索ワードを入力する前に、あらかじめ必要な情報を提示するという「予測型パーソナルエージェント」です。これは、従来の検索エンジンのビジネスモデルと根本的に異なるアプローチであり、グーグルの支配的地位に対して本格的な脅威となる可能性があります。
メリウス・リサーチのアナリストであるベン・ライツェス氏は「これは検索市場の一部を食いつぶす動きだ」と指摘。Pulseの導入は、オープンAIがデジタル広告市場に本格参入する布石でもあり、「サム・アルトマンは広告ビジネスを始めなければならない」との見方を示しました。
広告モデルへの移行と巨額のデータセンター投資
オープンAIは今後数年で1兆ドル規模のデータセンター建設を計画しており、その資金を調達するためには、8億人の週次アクティブユーザーに向けた広告ビジネスの確立が不可欠だといいます。
すでに広告戦略強化の布陣も進行中で、広告ビジネスを急拡大させたInstacartの元CEOフィジ・シモ氏がアプリケーション部門の責任者に就任。また、新たなマネタイズチームの立ち上げも報じられており、本格的な広告プラットフォームへの移行が視野に入っています。
ChatGPTの検索市場シェアと将来的な広告収益
現在、ChatGPTの検索市場におけるシェアはグーグルの20%程度と推定されており、仮に同様の広告収益モデルを展開すれば、年間400億ドル以上の広告収入が見込める可能性があります。さらに成長すれば、メタ・プラットフォームズ(META)の年間2000億ドルを超える規模にも迫るとの見方も出ています。
アルファベットにとっての本当のリスク
一方でアルファベット(GOOGL)も黙ってはいません。GeminiによるAI強化や検索広告の価格引き上げにより、投資家からの評価は回復傾向にあり、2025年にはエヌビディアに次ぐ「マグニフィセント・セブン」の好成績銘柄となりました。
しかし、検索広告がアルファベットの総利益の85%を占めている現在、Pulseの登場は広告単価の上昇を阻む大きな要因となる可能性があります。仮に検索の支配的地位を失えば、他の成長分野(クラウドやYouTube、Waymo)では埋めきれない影響が出るかもしれません。
アナリストの評価と今後の注目点
ライツェス氏は、アルファベット株を「ホールド」とし、目標株価を255ドルとしています。今後の焦点は、オープンAIが広告ビジネスをいかに構築し、アルファベットの牙城にどこまで食い込めるかという点になっています。
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