AIブームで取り残されたASML、その理由と復活の鍵とは?

  • 2025年9月29日
  • 2025年9月29日
  • BS余話

オランダの半導体製造装置大手ASML(ASML)は、世界のAIチップ製造に欠かせないリソグラフィー装置の供給で独占的な地位を築いています。特に、EUV(極端紫外線)リソグラフィーでは他の追随を許さず、高性能半導体の進化を支える中核企業です。しかし、株価の動きは他のAI関連銘柄に比べて見劣りする状況が続いています。

期待された「High NA EUV」技術に慎重なTSMC

ASMLは次世代製品として、「High NA(数値開口)」EUVリソグラフィー装置を開発しました。より微細な回路を単一の露光工程で描画できる技術で、プロセスの簡素化や歩留まり向上が期待されます。しかし、この装置は1台4億ドル超という高額な価格がネックとなり、最大顧客である台湾積体電路製造(TSMC)は導入に慎重な姿勢を見せています。

TSMCは既存のEUV装置を最大限活用する方針を示しており、「High NAは十分に成熟してから導入する」との公式見解をバロンズに示しました。

インテルとメモリメーカーが次の希望

TSMCの慎重姿勢をよそに、米インテル(INTC)や韓国のSKハイニックス、サムスン電子などは「High NA EUV」の導入を進めています。特にインテルは、過去のEUV導入の遅れを挽回する形で、オレゴン州の研究施設に2台のHigh NA装置を配備しています。

さらに、生成AIの発展に欠かせないHBM(高帯域メモリ)需要の高まりを背景に、メモリ業界も微細化を迫られています。SKハイニックスは、業界初となる量産体制でのHigh NA導入を発表し、競合他社のサムスンやマイクロンにも圧力をかけています。

課題は「顧客の幅」と「投資タイミング」

ASMLの課題は、巨大で技術的に優れた製品を持ちながらも、導入を決断する顧客の数が限られている点にあります。とりわけ、最大顧客TSMCの慎重姿勢は、ASMLの売上見通しに影響を与えており、2026年の成長に不透明感が生じています。

また、インテルも量産に移行するまでには時間がかかる見通しであり、すぐに売上貢献には結びつかない可能性があります。

投資家にとってのASMLの位置づけ

AIブームの恩恵を最も受けそうな企業でありながら、装置の価格、顧客の投資判断、業界全体の導入タイミングという複合的な要因がASMLの株価パフォーマンスに影響しています。

今後、AIチップの進化がさらなる微細化を求め、High NAの導入が避けられない局面に達すれば、ASMLの本格的な成長フェーズが再び訪れる可能性があります。ただし、それがいつになるのかは、現時点では見通しにくい状況です。

*過去記事「ASMLがAI戦略を本格始動!仏ミストラルAIに13億ユーロ出資

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