オープンAI頼みのAIブームに潜むリスクとは?米市場に走る不安の影

2025年、AI関連企業への投資は史上空前の規模となっており、テクノロジー企業各社は合計で約4,000億ドル以上をAIインフラに注ぎ込んでいます。しかし、この熱狂の中心にあるのは、たった一社「オープンAI」であり、それこそが市場全体にとっての大きなリスクであるという警鐘が鳴らされています。

AIインフラ投資の急拡大とオープンAIの存在感

オープンAIは、ChatGPTの成功によってAIブームの起点となり、現在では巨大企業との数百億ドル規模の契約を次々と獲得しています。たとえば、オラクル(ORCL)は、オープンAIとの契約を背景に180億ドルの社債を発行し、大規模なデータセンター拡張を計画しています。さらに、AIインフラ企業コアウィーブ(CRWV)は、同社との契約拡大を受けて、すでに純負債倍率が5倍を超える高レバレッジ状態にあります。

膨らむ負債、減少するフリーキャッシュフロー

ベアード社のテッド・モートンソン氏は、オープンAIのフリーキャッシュフローは「劇的にマイナス」であると述べ、資金繰りは社債発行に依存していると指摘。マイクロソフト(MSFT)やアルファベット(GOOGL)といった巨大企業も、かつては潤沢なキャッシュフローを誇っていましたが、現在はAI投資で収益性が劣化し始めているとのことです。

クラウド企業全体では、2025年に約3,800億ドル、2026年には7,000億ドル以上のAI投資が見込まれています。これほどの資金を調達するためには、借り入れ(社債発行)に頼らざるを得ず、これが「AI版の債務バブル」を生む可能性があると警告されています。

AIブームの連鎖は製造業や公益企業にも

AIインフラの波は、オープンAIやクラウド大手だけでなく、キャタピラー(CAT)やカミンズ(CMI)などの重機メーカーや電力関連企業にまで波及しています。データセンター建設ラッシュにより、送電網への負荷も急増しつつあり、米国の電力価格上昇は家計にも影響を与えています。

この点について、モートンソン氏は「誰も望んでいなかった自動運転、暗号資産、生成AIが、結果的に光熱費高騰を引き起こしている」と消費者の反感の高まりに言及。また、電力不足によるAI開発の遅延や、重要部品の供給制約なども今後のボトルネックになりうるとしています。

今は「期待がピーク」の段階

現在の市場は、「ガートナーのハイプサイクル」でいうところの「過度な期待のピーク」にあるとされ、AI関連銘柄は“完璧な成長”を織り込んだ価格設定になっています。問題は「現実が追いつかない可能性」にあり、特にオープンAIが資金調達に行き詰まるような事態があれば、市場全体が揺らぐリスクがあります。

投資家へのアドバイス:「Be Careful」

モートンソン氏は「投資家に今伝えたい言葉は『Be careful』だ」と語り、以下の4つの懸念点を挙げています。

  1. AI関連企業の急激な債務増加
  2. 高騰する電気料金による消費者の不満と政治的圧力
  3. AIインフラ構築に必要な部品の供給制約
  4. 個人投資家と機関投資家の意識の乖離による相場の歪み

特に最後の点では、個人投資家が短期的な利益狙いで過熱している一方、機関投資家はむしろ利確・撤退を始めているという“ミスマッチ”も指摘されました。

まとめ:AI相場の“王様”が崩れたとき、何が起きるか?

今後2〜3年で生成AI関連の投資が実を結ぶ可能性はありますが、それまでの期間、資金調達やインフラ整備のスピード、電力供給の確保など多くの不確実性に直面しています。そして、その中心にいるのがオープンAIです。

もしこの“王様”が崩れれば、AI市場全体が一気に冷え込むリスクも現実味を帯びてきます。

*過去記事はこちら オープンAI

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