配当利回りの高い銘柄を選ぶのは、長年にわたり投資家に支持されてきた王道戦略です。しかし、配当だけでなく自社株買いや負債削減も含めた「総還元利回り(shareholder yield)」に注目することで、より総合的なリターンを期待できるとする考え方が注目を集めています。
総還元利回りとは?
総還元利回りは、企業が株主にどれだけキャッシュを還元しているかを示す指標で、以下の要素を含みます:
- 配当支払い
- 自社株買い
- 負債削減(場合によって含まれる)
この指標を用いることで、単に「高配当=お得」とは限らない企業の真の株主還元姿勢が浮き彫りになります。
自社株買いで注目されたゼネラルモーターズの例
例えばゼネラルモーターズ(GM)は、配当利回りはわずか1%ながら、過去12か月で80億ドルもの自社株買いを実施しており、総還元利回りは15%に達しています。もっとも、純利益が70億ドルだったことから、やや借入に頼った還元となっており、長期的な財務健全性に注意が必要です。
「総還元利回りが高く、かつ実力がある」10銘柄
バロンズは2025年9月25日付けの記事で、S&P500構成銘柄の中から以下のような条件を満たす10銘柄を紹介しています:
- 総還元利回りが高い(9%以上)
- 純利益で株主還元をまかなっている
- バリュエーションが割安(予想PER約10倍)
紹介された10銘柄は以下の通りです:
- コムキャスト(CMCSA)
- モルソン・クアーズ・ビバレッジ(TAP)
- ゼネラル・ミルズ(GIS)
- クラフト・ハインツ(KHC)
- HP((HPQ)
- デボン・エナジー(DVN)
- EOGリソーシズ(EOG)
- レナー(LEN)
- ハリバートン(HAL)
- イーストマン・ケミカル(EMN)
この10銘柄の平均配当利回りは約4%と、S&P500平均(1.2%)の3倍以上。総還元利回りでは9%を超え、成長株に偏る現在の市場とは異なる魅力を持っています。
AIブームとの対比:グロースとバリューのねじれ
現在の米国株市場はAI銘柄に熱狂しており、アップルやアルファベットなど一部の巨大企業が株主還元を自社株買いで支えてはいるものの、全体の還元利回りは低水準です。一方で、上述の10銘柄は「株価は低迷していても高い実質利回りで報いている」存在として、逆張り的な価値が見直されつつあります。
総還元利回りに着目したETF戦略も
個別銘柄選びに不安がある場合、以下のようなETFも候補になります:
- WisdomTree U.S. Value ETF(WTF):還元利回り約7%
- Cambria Shareholder Yield ETF(SYLD):還元利回り約3.5%
どちらも配当と自社株買いを重視しており、インカム目的の長期投資家には魅力的な選択肢です。
まとめ:長期投資家こそ「総還元」を重視すべき
AI関連銘柄の過熱感が高まる中、堅実にキャッシュを株主へ還元する企業群に注目する意義は増しています。短期的な値上がりこそ期待できないかもしれませんが、バリュエーションの低さや還元政策の持続性は、長期的には報われる可能性が高いと考えられます。
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