オープンAI買収の可能性?マイクロソフトが握る「最後の切り札」

AI業界における最重要プレイヤーの一つであるオープンAIをめぐる動きが、再び市場の注目を集めています。9月11日に発表された基本合意書(MOU)の背後で、マイクロソフト(MSFT)による将来的な買収の可能性が現実味を帯びてきました。

PBCへの移行で変わる力関係

現在、オープンAIは営利事業部門をパブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)に移行する準備を進めています。これにより、非営利団体である旧OpenAIは株式の大部分(1000億ドル超の価値)を保有しながらも、経営への支配権を失うことになります。

これは、非営利団体の名の下に営利活動を行っていた従来の複雑な構造を整理し、投資家からの資金調達やIPOを円滑に進めるための布石とされます。

AI業界アナリストのリチャード・ウィンザー氏(Radio Free Mobile)はこの点について、「支配権のない大株主という新体制は、経営の自由度を高め、上場や買収をより現実的な選択肢にする」とコメントしています。

マイクロソフトが得た「実質的な譲歩」

オープンAIが構造改革を進めるためには、マイクロソフトの承認が不可欠です。今回のMOU締結にあたり、マイクロソフトは大きな譲歩を引き出したとみられています。

その背景には、オープンAIが資金調達の一環として交渉しているソフトバンクの出資20億ドルが、PBCへの移行完了を条件としている点があります。この条件を満たすにはマイクロソフトの同意が前提となるため、交渉上の優位は明らかです。

焦点は資金繰りと買収シナリオ

ここで注目すべきは、オープンAIのキャッシュバーン(資金消費)が急速に拡大しているという事実です。

『The Information』によると、同社は2029年までに累計1150億ドルの資金を消費する見込みで、従来予測を800億ドルも上回っています。これは、AIクラウドインフラ(オラクルとの契約など)への支出が膨らんでいることを示しています。

この状況に対しウィンザー氏は、次のような見通しを示しています。

「最も現実的なシナリオは、オープンAIが資金繰りに行き詰まり、マイクロソフトが買収に踏み切ることだ」

つまり、資金難がマイクロソフトにとって絶好の買収機会となる可能性があるというのです。

提携から競合へ、微妙な関係

なお、現在マイクロソフトはオープンAIの営利部門の49%を保有していますが、両社の関係は単なる提携から「フレネミー(友と敵)」へと進化しています。

オープンAIはオラクルとのクラウド契約やソフトバンクからの資金調達により、マイクロソフトの直接的な競合にもなりつつあります。このため、マイクロソフトにとっては、オープンAIを自社に完全統合することが、AI覇権を維持する戦略の一環とも考えられます。

まとめ:買収の布石か、資金調達の転機か

今回のMOUと構造改革は、単なる提携強化にとどまらず、マイクロソフトによる将来的な買収という可能性までを含んだ大きな転機となるかもしれません。

今後の焦点は以下の3点です。

  • オープンAIが年内に構造改革を完了できるか
  • 新たな資金調達が成功するか
  • マイクロソフトが最終的な買収に踏み切るか

AI業界の覇権を左右するこの動向から、今後も目が離せません。

*過去記事「オープンAIが直面する「3,500億ドル問題」とは?AI開発の裏側に迫る

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