GLP-1受容体作動薬(通称GLP-1s)に対するシリコンバレーの関心が急上昇しています。この記事では、米テック系メディアのThe Informationが2025年9月5日に公開した最新レポートを紹介しながら、テック業界の起業家・投資家・経営者たちがこれらの薬をどのように活用しているのか、その背景と広がりをまとめます。
シリコンバレーの約半数がすでに使用中
The Informationが行った独自調査によると、回答者の50.5%が何らかのGLP-1薬を現在使用中と回答しました。これは米国全体での推定使用率12%(RANDによる調査)と比べて極めて高い数字です。
特にセマグルチド(オゼンピックなど)やチルゼパチド(ゼップバウンドなど)といった薬剤が、単なる減量目的を超えて、集中力、意思決定、活力の向上といった「最適化」への応用として注目されています。
低用量“マイクロドージング”が主流に
記事では、多くのユーザーが標準的な投与量ではなく「マイクロドージング」と呼ばれる低用量の服用を選んでいることが紹介されました。これにより、吐き気などの副作用を避けつつ、食欲抑制や集中力向上などの恩恵だけを享受するという狙いがあります。
マーケティング企業Code3のCEOであるクレイグ・アトキンソン氏は、「スタート用量で十分だった」と語り、15ポンドの減量よりも外食時に誘惑に打ち勝てる意志力の向上が最大のメリットだと述べています。
なぜテックエリートがGLP-1に惹かれるのか
GLP-1薬がテック業界で受け入れられている理由としては以下の点が挙げられます。
- 経済的な余裕があり、自己投資に積極的
- バイオハッキング文化が根付き、サプリ・ペプチド・HRTと併用する試行的アプローチに寛容
- 会食や不規則なライフスタイルの中でも健康を保つ手段を求めている
- 薬により食事・体調の自己制御が容易になり、パフォーマンスの最大化が期待できる
セルフ最適化のための「新しい定番」
元アパレル企業創業者のテイラー・オファー氏は「食べ物について考える時間がなくなったことで、仕事への集中力が格段に上がった」と述べています。同氏は以前、集中力を上げるためにアデラルなどの刺激薬を試した経験があるものの、GLP-1薬のほうが一日中気分が安定して快適だと語っています。
また、GLP-1を通じて血糖値管理に成功したセールスフォースのAI戦略担当者ファテメ・カティブルー氏は、更年期によるインスリン抵抗性が根本原因であったことが判明したと明かしています。
GLP-1市場の広がりと商機
GLP-1の需要増加を受け、NoomやHims、Measuredなどのスタートアップが続々とこの分野に参入しています。特にマイクロドージングをサポートする新たなプログラムの展開が、コストを抑えながらも効果を体感したいユーザー層に響いています。
GLP-1薬の効果をさらに高めるための副作用緩和製品や、補助サプリメントも新たな商機として注目されており、グミタイプのサプリを展開するGrünsなども「オゼンピックの親友」として市場に登場しています。
一部では懸念の声も
GLP-1薬には筋肉量の減少、顔のこけ(いわゆる「オゼンピック・フェイス」)、体温低下、脱水による肌の変化などのリスクも報告されています。多くの服用者がこれらの副作用と向き合いながら、筋トレや高たんぱく食への切り替えを進めているとのことです。
また、医療機関ではマイクロドージングはまだ正式には推奨されておらず、あくまで実験的な手法であるという立場を崩していません。
まとめ:GLP-1は“痩せ薬”に留まらない
GLP-1薬は単なるダイエットツールではなく、パフォーマンス向上・生活最適化・メンタルケア・疾患予防など、多様な目的で活用されつつあります。今後は、低用量での使い方や周辺サプリメント市場の拡大も含め、新たな健康文化を形作っていく可能性があります。
体重の数字だけでなく、日々の意志決定、集中力、健康マーカー改善といった面においても効果が語られ始めたGLP-1薬。今後もテック業界の“自分アップデート”の鍵として、ますます存在感を強めていきそうです。
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