テスラの販売減速は序章に過ぎない?2026年に迫るEV危機とは

2025年第2四半期のアメリカにおける電気自動車(EV)の販売は前年同期比で6%減少し、31万台強にとどまりました。中でもテスラ(TSLA)は約13%減となる14万3,535台に落ち込み、市場シェアも3.5ポイント低下し46.2%となりました。

中古EV市場の低迷が新車市場を圧迫

投資情報メディア「バロンズ」の2025年9月1日付記事によると、EV販売の鈍化には文化的な要因や「航続距離への不安」もあるものの、真の問題は「中古車価格」にあるとのことです。

カナダの大手証券会社RBCのアナリストであるトム・ナラヤン氏によれば、中古のEV価格は新車価格の約55%にまで下落。一方で内燃機関車は75%前後の価格を維持しており、EVの価格下落が際立っています。

例えば、2022年型のデュアルモーター長距離モデルYは、現在2万5,000ドルから3万ドルで取引されており、新車時の5万ドルから大幅に値下がりしています。

価格下落の一因は税制優遇の終了

この価格崩壊の一因とされているのが、連邦レベルでの税制優遇措置の終了です。9月末で7,500ドルのEV購入税額控除が終了する予定で、それ以降はEVがさらに割高に感じられるようになります。

このタイミングでEVを買うよりも、中古EVを選ぶほうが消費者にとっては合理的な選択肢になりつつあるというのがナラヤン氏の見立てです。

自動車メーカーの収益にも打撃

フォード・モーター(F)は、EV部門「Model e」の赤字を公開している数少ない伝統的メーカーのひとつです。第2四半期におけるModel eの赤字額は13億ドルで、1台あたり約2万2,000ドルの損失に相当します。

ナラヤン氏は、むしろEVの販売台数が減ることはフォードやゼネラルモーターズ(GM)にとっては好都合かもしれないと指摘しています。なぜなら、これらの企業にとって最も利益が出るのは依然として内燃機関車の販売だからです。

テスラの次なる成長ドライバーはAI?

欧州でもテスラは苦戦しており、スウェーデンでは2025年8月の新規登録台数がわずか210台と、前年同月比で84%も減少しました。

それでもナラヤン氏はテスラ株を「買い」評価としており、目標株価を325ドルと設定。その理由は、自動運転車やヒューマノイドロボットなど、人工知能を活用した新事業にあるといいます。

テスラは2025年6月にテキサス州オースティンでロボタクシーサービスを開始し、2026年にはロボットの本格販売も見込んでいます。

テスラの前に立ちはだかる「荒波」

イーロン・マスク氏自身も、今後数四半期は厳しい展開になると警告しており、政府の支援策縮小もその要因のひとつです。中古市場の価格動向を見る限り、マスク氏の言う「rough」は、想像以上に深刻な意味を持つのかもしれません。

*過去記事はこちら テスラ TSLA

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