半導体大手インテル(INTC)はトランプ政権と政府支援をめぐる協議を進めていると報じられており、これを受けて同社の株価は先週5日間で23.1%上昇し、2000年以来25年ぶりの大幅な上昇を記録しています。
政府による出資の可能性とその狙い
報道によると、トランプ大統領はインテルへの出資を含む支援を検討しており、アメリカ国内での半導体製造基盤の強化を狙っているようです。これは台湾のTSMC(TSM)など海外ファウンドリーに依存する構造を見直し、自国技術を再建する長期戦略の一環とみられます。
インテルもこれに呼応する形で「アメリカの製造業と技術力の強化に深くコミットしている」とコメントを発表しました。
問題は資金ではなく技術力
しかし、アナリストからは懐疑的な見方も出ています。バーンスタインのステイシー・ラスゴン氏は、「資金があっても、技術ロードマップが不確かであれば、それは何十億ドルを燃やすようなもの」と辛辣に指摘。実際、同氏はインテルの7nm以降のプロセス技術に関して、需要不足や製品遅延が相次いでいると分析しています。
オハイオ工場計画への影響
もう一つの論点は、インテルが建設を延期しているオハイオ州の新工場です。現状、自社の製造能力がすでに過剰である中で、政府がこのプロジェクトの加速を求めた場合、経済合理性が損なわれる可能性があります。
ラスゴン氏は「民間投資家なら許容できない非効率も、政府出資なら容認されるかもしれない」と述べ、国家戦略としての側面を認めつつも、民間投資とのバランスに懸念を示しました。
投資家の反応と今後の見通し
株価が急騰した背景には、政府支援による成長期待がある一方で、根本的な問題が解決していない点も見逃せません。ラスゴン氏は依然としてインテル株に対し「マーケットパフォーム(中立)」の評価を維持しています。
一方、シーポート・リサーチ・パートナーズのアナリスト、ジェイ・ゴールドバーグ氏も「本当に政府が先端プロセスの半導体を継続的に購入してくれるのか」と疑問を投げかけており、今回の話が「政治的パフォーマンスに終わらないか」が焦点になると述べています。
まとめ
トランプ政権による支援構想は、米国半導体産業の自立を目指す象徴的な動きです。しかし、インテルの技術的遅れや製造力の過剰問題といった根本課題は依然として解決していません。今後の動向は、単なる資金注入ではなく、実効性ある技術再建策が講じられるかどうかにかかっていると言えます。
*過去記事「インテル株急騰!米政府の出資報道で投資家が注目」
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