中国のインターネット規制当局である国家インターネット情報弁公室(CAC)は、過去2週間の間にバイトダンス(非上場)、アリババグループ(BABA)、テンセント・ホールディングス(TCEHY)などの国内大手IT企業に対し、エヌビディア(NVDA)製チップの購入を停止するよう指示しました。理由は、これらのチップに関するデータ安全性の懸念です。この命令は、米国のトランプ大統領がエヌビディアに中国でのH20チップ販売を条件付きで許可した直後に出されたものです。
米中間の半導体販売を巡る背景
トランプ大統領は8月11日の記者会見で、エヌビディアがH20チップを中国に販売することを承認しましたが、その条件として売上の15%を米国政府に支払うことを求めました。H20チップはエヌビディアの最先端AIチップほど高性能ではありませんが、米国の輸出規制に適合しています。さらに、トランプ大統領は、エヌビディアがより高性能なブラックウェルチップの改良版を中国に販売する可能性にも言及しました。
中国側の懸念と国内チップ推進
CACはエヌビディアのH20チップに対して、米国で検討中の「位置情報トラッカー」搭載義務化法案や、データが米国に流出する可能性のあるバックドアの存在を懸念しています。また、中国政府は華為技術(Huawei)など国内メーカー製チップへの切り替えを推進しており、今回の命令はその方針の一環とみられます。昨年も同様の要請が報じられており、外国製チップ依存を減らす狙いがあります。
エヌビディアの中国市場への影響
エヌビディアの中国からの売上は、2025年1月時点で全体の13%に低下しており、2023年度の21%から減少しています。これは主に米国の輸出規制強化によるものです。先月以降、中国の大手IT企業はH20チップを70万個発注しており、米商務省はこれらの出荷を承認し始めていますが、今回の購入停止命令が既存の注文にどの程度影響するかは不透明です。
新型ブラックウェルチップの動向
中国企業は最近、中国市場向けに特別設計されたブラックウェルチップのサンプルを受け取っています。このチップはNVLinkを搭載し、チップ間のデータ転送を向上させますが、H20より性能は劣ります。エヌビディアはさらに高帯域幅メモリを搭載した新型ブラックウェルチップを開発中で、H20を上回る性能を目指しています。ただし、この新型チップを中国に販売するためには米商務省の承認が必要です。
この内容を踏まえると、米中間の半導体摩擦はさらに激化する可能性があり、エヌビディアの中国事業は不確実性の高い局面に入っているといえます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA
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