米国の衛星通信企業ASTスペースモバイル(ASTS)の株価が、第2四半期決算の発表を受けて急伸しました。8月12日の取引では8.4%高となり、4日続落から反発しました。同社は2026年までに45〜60基の衛星を打ち上げる計画を進めており、米国、欧州、日本などでの宇宙ベースの携帯ブロードバンドサービス提供を目指しています。現在は6基の衛星(うち5基が商業・政府利用で稼働中、1基が試験機)を運用中です。
米国防総省との連携と政府契約の拡大
ASTスペースモバイルは米国防総省との連携を強化しており、標準的なモバイル端末を用いた戦術的非地上ネットワーク接続の実証に成功しました。これには複数の米軍部隊が参加しています。四半期中には米政府を最終顧客とする初期段階契約を2件追加し、累計契約数は8件に達しました。2025年2月には米軍の宇宙開発局向けに4,300万ドルの契約を獲得しています。
戦略的優位性と提携関係
カンター・フィッツジェラルドのアナリストは、同社のデジタルペイロード技術やパートナーシップが今後数年間で政府需要を押し上げる可能性があると指摘しています。株価目標は30ドルで、アナリスト9人中6人が強気、3人が中立の評価をしています。
事業見通しと欧州展開
同社は2025年後半の売上見通しを5,000万〜7,500万ドルと据え置き、政府・商業顧客双方からの収益を見込んでいます。欧州ではボーダフォン(VOD)と提携し、欧州域内で直接衛星通信サービスを提供する新会社SatCoを設立しました。既にEU加盟27カ国中21カ国の通信事業者から関心表明を得ています。
大手通信・IT企業からの出資と周波数取得
ASTスペースモバイルはベライゾン(VZ)から1億ドル規模の戦略的提携を受け、AT&T(T)、アルファベット(GOOGL)、ボーダフォンからも出資を受けています。さらに今月初めには、世界規模で60MHzのSバンド周波数優先権を取得し、加入者容量の拡大と新市場でのサービス展開を狙います。
株価パフォーマンス
2025年の株価上昇率は135.8%に達しており、S&P500指数の9.6%を大きく上回っています。宇宙通信市場での競争が激化する中、同社はスペースXのスターリンクに対抗する存在として注目を集めています。
*過去記事「2025年の宇宙開発業界の展望:主な動向と注目企業」
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