2025年8月7日、アメリカの製薬大手イーライ・リリー(LLY)が第2四半期決算と減量用経口薬の臨床試験結果を発表しました。決算自体は市場予想を上回る好内容となりましたが、発表後に株価は急落しました。背景には新薬への過度な期待があったと見られています。
減量薬オルフォグリプロンの試験結果が市場の期待に届かず
イーライ・リリーは、肥満成人を対象とした経口の減量薬「オルフォグリプロン」の臨床試験結果を公表しました。試験では、72週間で平均12.4%の体重減少が見られたとされています。
一見すると好成績に見えるこの結果ですが、市場はより高い効果を期待していたようで、株価は発表直後の時間外取引で12%下落し、654.22ドルまで値を下げました。
第2四半期の売上と利益は市場予想を上回る
イーライ・リリーの第2四半期の売上は156億ドル、調整後1株利益は6.31ドルとなり、市場予想(売上147億ドル、利益5.60ドル)を大きく上回りました。
売上は前年同期比で38%の増加となり、減量薬「ゼップバウンド」や糖尿病薬「マンジャロ」の販売量が伸びたことが寄与しています。
ノボ・ノルディスクとの競争で優位を維持
デンマークのライバル企業ノボ・ノルディスク(NVO)は、アメリカ市場での減量薬競争においてイーライ・リリーに後れを取っています。
現在、ゼップバウンドはアメリカのブランド付き減量薬処方の59%を占めており、ノボ・ノルディスクの「ウゴービ」は40%にとどまっています。ノボ・ノルディスクの米国預託証券は、2025年7月29日に業績予想を大幅に下方修正して以来、34%以上下落しています。
一方でイーライ・リリーの株価も昨夏の高値から20%以上下落しているものの、年初来では約4%の下落にとどまっています。
減量薬ブームの冷却と法的リスクが影響
2024年後半からは、減量薬に対する市場の熱狂にも陰りが見え始めました。特に、コンパウンディング薬局による模倣薬の流通といった法的問題が浮上し、ゼップバウンドやウゴービの売上見通しにも影響が出始めています。
トランプ大統領による薬価引き下げ圧力
政治的なリスクも無視できません。トランプ大統領は先週、イーライ・リリーのCEOデビッド・リックス氏を含む複数の製薬大手の経営陣に対して書簡を送りました。内容は、特定の薬価を9月末までに引き下げなければ、「あらゆる手段を講じて米国民を守る」とするもので、業界に大きな影響を与える可能性があります。
イーライ・リリーがこの圧力にどのように対応するかは、今後の株価動向にも大きく関わってきます。投資家の関心は決算の数字以上に、今後の価格戦略や規制対応に移っていると言えます。
*過去記事「イーライ・リリー株に買いチャンス?GLP-1競争激化でも成長期待」
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