旅行需要の回復を追い風に、民泊大手のエアビーアンドビー(ABNB)は新たな成長戦略に乗り出しています。しかし、政治的な取り組みやサービス拡充への投資が利益率を圧迫する可能性もあり、投資家の不安が広がっています。
第2四半期は増収増益も株価は下落
エアビーアンドビーは2025年4〜6月期の決算で、売上31億ドルを記録し、前年同期比13%増となりました。1株利益は1.03ドルで、アナリスト予想の0.94ドルを上回りました。宿泊数の増加がこの成長を後押ししました。
しかし、決算発表後の8月6日の時間外取引で株価は約6%下落しました。これは、将来的な利益率の低下見通しや、市場との期待ギャップが影響したとみられます。
成長投資と政治関与が利益率を圧迫
エアビーアンドビーは、2025年第3四半期の売上を40.2億〜41億ドルと予想しています。これはアナリスト予想の40.5億ドルとほぼ一致していますが、同社は「政策イニシアチブと新たな成長への投資」により、調整後EBITDAマージン(利払い・税引き・償却前利益率)が前年同期を下回るとしています。
それでも通期では調整後EBITDAマージンが最低34.5%になるという従来の見通しは維持しています。
アプリ刷新とサービス多様化で競争に対応
同社は2025年にアプリを大幅に刷新し、有名人との交流イベントやローカルガイドによるツアー、ヘアスタイリングやスパなどのサービス拡充に取り組んできました。これにより旅行体験の質向上を図る一方で、ホテルとの競争も激化しています。
しかし、消費者の可処分所得が限られる中で、新サービスがどこまで業績に貢献できるかは未知数です。
規制強化とローカル政治への関与
民泊業界全体として、各都市の規制強化に直面しています。パリやサンフランシスコでは貸し出し可能日数に上限があり、ニューヨークでは30日未満の短期レンタルに制限がかかっています。
エアビーアンドビーはこれに対抗するため、地方政治への影響力強化を図っており、候補者支援も行う予定です。同社のデータによると、2017年には上位25都市が全体の物件数の約4分の1を占めていましたが、現在では約8%に減少しています。
中長期の注目ポイント
エアビーアンドビーのようなプラットフォーム型企業にとって、政治リスクと規制対応は重要な戦略課題です。同社の積極的な成長投資とサービス多様化が、競争の激しい旅行・宿泊市場において優位性を築けるかが今後の焦点となります。
株価は2025年に入ってから0.7%下落しており、S&P500(SPX)の約8%上昇と比べて出遅れ感があります。今後の業績動向と規制対応の進展が、投資家心理に与える影響に注目が集まります。
*過去記事はこちら エアビーアンドビー ABNB
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