アマゾンがAIからサイトを守る理由とは?広告収益を巡る攻防

米メディア「The Information」は2025年7月30日、アマゾン(AMZN)がグーグルなどのAIショッピングツールに対し、自社サイトへのアクセス制限を強化していると報じました。これは、AIによる自動ショッピングが広がる中で、eコマース大手がどのように対応を進めているのかを示す象徴的な動きとして注目されています。

AIクローラーをrobots.txtでブロック

アマゾンは近年、パープレキシティ、アンソロピックのClaude、オープンAIのChatGPTなどのクローラーをrobots.txtファイルでブロックしてきました。新たに加えられた制限では、グーグルのAIショッピングエージェント「Project Mariner」なども対象に含まれています。こうした制限により、アマゾンの商品ページは外部のAI検索結果にはほとんど表示されなくなっている状況です。

背景には広告ビジネスへの懸念も

アマゾンが強硬な姿勢を取る背景には、年商560億ドル規模ともいわれる高利益の検索広告ビジネスを守る狙いがあります。AIによるショッピングエージェントが一般化すれば、消費者が直接アマゾンのサイトを訪れる機会が減り、広告収入やユーザーデータの取得機会が失われる可能性があります。

一方で、AIエージェントによる自動購入をブロックすることで、販売機会を自ら狭めるリスクもはらんでいます。商品発見の経路がAIにシフトする中で、企業のビジネスモデルが大きく変わる可能性が指摘されています。

ショッピファイは「決済」に焦点、パープレキシティやオープンAIと提携も

これに対し、ショッピファイ(SHOP)はより柔軟な方針を取っています。ショッピファイは7月にrobots.txtに新たな「Robot and Agent Policy」を追加し、自動エージェントによるチェックアウト操作を禁止しましたが、クローリング自体は制限していません。また、AI企業がShop Payのチェックアウト機能を組み込むことで、提携を可能とする構造を整えています。

すでにパープレキシティとの連携が一部ユーザー向けに始まっており、オープンAIもショッピファイとの統合を計画していると報じられています。

ウォルマートはオープン戦略を継続

ウォルマート(WMT)は現在のところ、robots.txtにエージェント向けの制限を設けておらず、より開かれた姿勢を維持しています。同社は自社開発のAIチャットボット「Sparky」を6月に導入し、今後は定期購入や外部エージェントとの連携機能も追加予定としています。

EC事業の拡大を目指すウォルマートは、売上全体の20%未満にとどまる現状から、今後5年間で50%の成長をオンライン販売が担うことを目標に掲げています。

まとめ

AIショッピングエージェントの台頭により、アマゾン、ショッピファイ、ウォルマートといった大手企業はそれぞれ異なる戦略を展開しています。直接的な顧客接点と広告ビジネスを重視するアマゾン、チェックアウトの主導権にこだわるショッピファイ、パートナーシップ拡大を見据えたウォルマート。AI時代のショッピング体験を巡る競争は、今後さらに激化しそうです。

最新情報をチェックしよう!