2025年7月31日、米メディア「マーケットウォッチ」は、テスラ(TSLA)がカリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアで新たにライド・ヘイリングサービス(ride-hailing service)を開始したと報じました。ライドシェア発祥の地でもあるこの地域で、同社は将来のロボタクシー展開に向けて第一歩を踏み出した形です。
運転手付きのライドサービス、ロボタクシーではない
今回始まったのは完全自動運転ではなく、運転手がハンドルを握る形式のサービスです。テスラのX(旧Twitter)で発表された内容によると、同社はベイエリアの一部ユーザーに対してこのサービスの招待を送付しています。ただし、現時点ではカリフォルニア州の完全自動運転サービスに必要な許認可を取得しておらず、あくまで限定的な試験導入とみられています。
オースティンでのロボタクシー実験と今後の展開
テスラは2025年6月にテキサス州オースティンで小規模なロボタクシー運用を開始しており、安全管理員を同乗させたモデルYが地理的に限定されたエリアで走行しています。イーロン・マスクCEOは先週の決算説明会で、このサービスを他地域にも拡大し、最終的には競合他社を超える規模にしたいと述べました。
マスク氏は、年内に米国人口の約半数にロボタクシーサービスを提供する計画も明かしており、現在はベイエリア、アリゾナ州、フロリダ州での許認可取得を進めているとのことです。
激戦区ベイエリアでの挑戦
テスラが進出したベイエリアは、ウーバー(UBER)やリフト(LYFT)といったライドシェア大手の本拠地であるだけでなく、自動運転技術で先行するウェイモ(Waymo/GOOGL、GOOG)の拠点でもあります。ウェイモはすでに1億マイル以上の無人走行を公道上で達成しており、ダラスやアトランタ、ロサンゼルスなど複数都市で展開を拡大しています。
カンターフィッツジェラルドのアナリスト、アンドレス・シェパード氏は、「ウェイモは業界のリーダーであり、車両数、対応地域、実績のすべてで先行している」と指摘しています。
投資家に求められる忍耐
ドイツ銀行のエジソン・ユー氏は、テスラのロボタクシーサービスがまだ非常に初期段階にあることを強調しており、現時点での走行距離は7,000マイル程度、車両数も10~20台にとどまっていると述べています。2026年中頃までに1,000台規模に拡大し、2027年以降にようやく業績貢献が見込まれるとの見通しを示しました。
ロボタクシー市場の競争とリスク
自動運転事業をめぐる競争は熾烈を極めており、ゼネラルモーターズ(GM)は2023年にロボタクシー子会社Cruiseの事業を縮小しました。これは、同社のAVが歩行者を巻き込んだ事故を起こし、カリフォルニア州での営業許可を停止されたことも一因です。
今後も自動運転技術の実用化には時間と資金が必要とされることが示されており、テスラをはじめとする企業には持続的な取り組みが求められます。
*過去記事はこちら テスラ TSLA