2025年7月30日、米半導体大手のクアルコム(QCOM)が2025年度第3四半期の決算を発表し、株価は時間外取引で約5%下落しました。売上全体は市場予想をわずかに上回ったものの、主力のスマートフォンおよび自動車関連セグメントで期待に届かない結果となったことが、投資家の失望を招いた形です。
主力分野の売上が予想に届かず
決算によると、スマートフォン向けチップを含むハンドセット部門の売上は63億ドルで、アナリスト予想の64億ドルにわずかに届きませんでした。自動車関連の売上も9億8,400万ドルと、予想の10億ドルを下回っています。
ただし、自動車分野についてはクアルコムのCFOであるアカシュ・パルキワラ氏が前向きな見方を示しており、「2029年度までに自動車関連売上を80億ドルに拡大する目標に向けて順調に進んでいる」とコメントしています。
全体としては好調な売上と利益
全体の売上は104億ドルで、ファクトセット調べの予想103億ドルをやや上回りました。調整後1株利益(EPS)は2.77ドルとなり、こちらも市場予想の2.71ドルを上回る結果でした。
IoT(モノのインターネット)部門の売上は前年比24%増、自動車部門は同21%増となり、CEOのクリスティアーノ・アモン氏は「多角化戦略の成果が出てきており、長期的な収益目標に自信がある」と述べています。
AIグラスやパーソナルAI機器に注目
クアルコムはAIの処理能力や低消費電力の計算性能に強みを持ち、エッジデバイス向けAI展開の加速によって恩恵を受けると考えられています。特に、メタ・プラットフォームズ(META)や中国のシャオミなどにチップを提供している「AIグラス(スマートグラス)」が注目分野とされており、CFOは「個人向けAI製品カテゴリーに大きな成長の余地がある」としています。
データセンター市場への参入と関税リスクへの備え
クアルコムは最近、アルファウェーブ・セミ(Alphawave Semi)を買収しており、この買収によってAI推論向けアクセラレーター製品を開発中です。これは、電力効率の高い推論処理を求めるハイパースケーラー向けに提供される予定です。
また、米中間の関税問題についても「複数のシナリオを想定しながら柔軟に対応する準備を進めている」とコメントしており、中国市場への供給継続を重視する姿勢を示しました。
今後の見通し
クアルコムは2025年度第4四半期の売上ガイダンスを103億~111億ドルと発表しました。ファクトセット調べのアナリスト予想である106億ドルの中央値をわずかに上回る見通しとなっています。
株価の短期的な反応とは裏腹に、AIや自動車、IoT分野での成長ストーリーに注目が集まっており、中長期での投資機会を見極めたい局面と言えそうです。