アンビックがIPOを準備中 エッジAI向け超低消費電力チップに注目集まる

  • 2025年7月30日
  • 2025年7月30日
  • BS余話

AIチップ需要の高まりを背景に、テキサス州オースティンを拠点とするアンビックが新規株式公開(IPO)に踏み切る見通しです。米メディア「マーケットウォッチ」が2025年7月29日付記事で報じました。

最大8500万ドルの資金調達を目指すIPO

アンビックは、普通株式340万株を1株あたり22〜25ドルで売り出す予定で、最大で約8500万ドルを調達し、時価総額は最大で4億2600万ドルに達する可能性があります。ティッカーシンボルは「AMBQ」、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場予定です。

同社は2010年に創業され、創業者のスコット・ハンソン氏が最高技術責任者(CTO)を務めています。CEOは半導体業界で20年以上の経験を持つ江坂文秀氏です。

超低消費電力でエッジAIを可能に

アンビックは、スマートウォッチやスマートグラスといった小型デバイス上でAI処理を可能にする、超低消費電力のSoC(システム・オン・チップ)やソフトウェアソリューションを提供しています。クラウドサーバーに頼らず、デバイス単体でデータ処理を行える「エッジAI」の分野に特化している点が特徴です。

同社の製品はすでに2億7000万台以上のデバイスに採用されており、2024年には4200万ユニットを出荷。そのうち約40%がAIアルゴリズムの実行に使われたとしています。

独自のSPOT技術で消費電力を大幅削減

アンビックは、独自の設計プラットフォーム「SPOT(Sub-threshold Power Optimized Technology)」を持ち、バッテリー駆動および有線電源デバイスの両方で消費電力を大幅に削減可能としています。SPOTは他の低電力アーキテクチャと組み合わせることで、用途に応じてSoCの電力消費を2〜5倍削減できると説明されています。

収益は横ばいも、損失は縮小傾向

アンビックは2025年3月期の売上高を1570万ドルと報告。前年同期(1520万ドル)と比べてわずかに増加しましたが、純損失は830万ドルと、前年の980万ドルからやや改善しています。

ただし、同社は長年赤字経営が続いており、将来的に黒字化できるかは不透明としています。また、収益の大部分を少数の顧客に依存しており、長期契約が存在しない点もリスクとされています。

エネルギー効率への注目と今後の展望

AIデータセンターのエネルギー消費に注目が集まるなか、アンビックのような省電力技術をもつ企業には関心が高まっています。大手チップメーカーであるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も、AIハードウェアのエネルギー効率改善を打ち出しており、業界全体が効率性重視にシフトしつつあります。

アンビックは将来的に、AIデータセンターや自動車向けチップにも自社技術を展開していく方針です。中国本土を除くアジア地域や欧米市場への拡大にも意欲を示しています。

関連銘柄にも注目

アンビックは、ARMホールディングス(ARM)が出資する企業の一つでもあります。今後の株価動向に加え、エッジAIや省電力チップを軸とした成長戦略に注目が集まりそうです。今後の上場後の値動きや業績推移を見守りたい企業のひとつです。

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