2025年7月25日、米投資情報メディア「バロンズ」は、ウォルト・ディズニー(DIS)株が「失われた10年」を終え、新たな成長フェーズに入った可能性があると報じました。過去10年間でわずか10%のリターンしか得られなかった同社株ですが、近年は着実な回復を見せています。
ESPNからテーマパークへ、ビジネスモデルの転換
かつてのディズニーは「メディア企業がテーマパークを所有している」というイメージでしたが、現在は「テーマパーク企業がメディア資産を持つ」という構造に変化しています。特にテーマパーク事業を含む「エクスペリエンス部門」は2024年度に93億ドルの営業利益を叩き出し、全社の59%を占めるまでに成長しました。今後もクルーズ船の新造や中東での新テーマパーク計画などが利益の拡大を支える見通しです。
ストリーミング事業の未来とESPNの再構築
ディズニーのストリーミング事業はようやく黒字化し、「Disney+」は一定の地位を確立しています。ただし、ネットフリックス(NFLX)には依然として及ばず、シティのアナリストは「業界トップでも後発でもなく、中間にある」と指摘しています。
一方で、ESPNは今秋にも本格的なストリーミング展開を開始予定です。月額29.99ドルでライブ放送を含む新サービスが導入され、ケーブルテレビからの離脱が加速する可能性もある中、既存の視聴者基盤とストリーミングの両立が課題となります。
映画部門の苦戦と2026年までの注目作品
ディズニーの映画部門は近年やや低迷しており、『スノーホワイト』や『Elio』などの不振が目立ちました。しかし、今後は『ファンタスティック・フォー』『アバター』『トイ・ストーリー』『アベンジャーズ』といった大型タイトルが控えており、2026年までの劇場収入増加が期待されています。
「失われた10年」の終焉と投資家の視点
過去10年間でディズニー株はS&P500やネットフリックスと比べて大きく後れを取りましたが、直近1年では38%上昇し、インデックスをアウトパフォームしています。今後はテーマパーク部門の安定収益とストリーミング部門の成長が、さらなる株価上昇を後押しする可能性があります。
CEOの後継と経営戦略の行方
2026年までの契約を残すボブ・アイガー現CEOの後継者には、テーマパーク事業の責任者ジョシュ・ダマロ氏をはじめ、エンターテインメント部門のアラン・バーグマン氏やデイナ・ウォルデン氏、ESPNの責任者ジェームズ・ピタロ氏などの名前が挙がっています。次のリーダーがネットフリックスに本気で挑むかどうかが、ディズニーの中長期的な成長戦略を左右しそうです。
まとめ
ディズニーは、かつてのテレビ中心の企業から脱却し、テーマパークとストリーミングを両輪とする企業へと変貌を遂げつつあります。ESPNの新戦略、強力な知的財産を活かした映画展開、海外市場への拡大など、成長の余地は依然として大きく、今後のディズニー株には引き続き注目が集まりそうです。
*過去記事はこちら ディズニー DIS