アップル、AI人材流出が止まらず 技術者たちが語る「金銭以外の理由」

2025年7月22日、米メディアThe Informationは、アップル(AAPL)のAI開発部門「ファウンデーションモデルチーム」で人材流出が続いている背景について詳しく報じました。AI開発競争が激化する中、アップルは自社戦略の曖昧さや報酬体系の見直し遅れにより、メタ・プラットフォームズ(META)やオープンAIといった競合に優秀な人材を引き抜かれる結果となっています。

技術的進展と組織内の軋轢

記事によると、アップル内部ではAIモデルのオープンソース化をめぐる意見対立があったとされています。AIソフトウェア責任者のクレイグ・フェデリギ氏は、iPhone上で動作するモデルの性能が他社より劣って見えることを懸念し、公開に慎重な姿勢を示したとのことです。

これにより、より研究主導で自由な環境を望む技術者たちの士気が低下し、一部はメタやアンソロピック、オープンAIといった他社への移籍を模索し始めました。

主要人物の離脱とその影響

ファウンデーションモデルチームのトップだったルオミン・パン氏は、Google DeepMindから引き抜かれ2021年にアップル入り。基盤モデルの構築を主導し、AXLearnなどのオープンソースツール開発にも深く関与していました。しかし、2025年7月にメタへの移籍を発表。最大2億ドルの報酬を受け取る可能性があると報じられています。

パン氏の退社に続き、チームメンバーの一部も転職を検討しており、アップルは残留組への報酬見直しを進めているとされています。

SiriとAI戦略の迷走

2024年に発表された「Apple Intelligence」は、ファウンデーションモデルチームの成果をベースにしたもので、新しいSiriのリリースも予定されていました。しかし、2025年3月には突然そのリリースが2026年に延期され、開発陣はその理由について知らされなかったといいます。

その後、Siriチームはフェデリギ氏とVision Proの開発責任者マイク・ロックウェル氏の管轄下に置かれ、外部のAIモデル(オープンAI、アンソロピック、Google)の導入可能性を検討し始めたことで、チーム内の動揺がさらに広がりました。

指針なきAI開発とモチベーションの低下

パン氏のチームは、高性能なAIモデルの構築という技術的な手応えを感じていた一方で、上層部からのビジョンや方向性が曖昧であることに不満を抱いていたとされます。「ChatGPTと同等の性能を目指す」という目標に留まるアップルの姿勢に対し、より大きなAIの未来を志す研究者たちの間では物足りなさを感じていたようです。

パン氏の後任にはGoogle出身のチーフエンジニア、ジフェン・チェン氏が就任しています。

終わりに

The Informationによれば、パン氏はLinkedInでの退職報告の中で、iPhone上でも高精度に動作するモデルの研究成果を紹介しながらも、チームとの別れが最も辛かったと語っています。アップルにとってAI戦略の再構築は喫緊の課題であり、人材流出にどう歯止めをかけるかが今後の成否を左右すると考えられます。

*過去記事はこちら アップル AAPL

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